【子どもの近視】予防と対策4選 近視になった場合の進行抑制も紹介
はじめに
この記事では、子どもの近視を防ぐための予防と対策について解説していきます。 「ゲームやタブレットの使用で、子どもが近視になっていないか心配」 「子どもが近視にならないためにはどんなことをしたら良いの?」 など不安を抱えている方は、ぜひご覧になってください。
この記事は、以下の内容について解説していきます。
- 子どもの近視を防ぐための予防と対策
- 近視の原因
- 近視になってしまったら?
この記事で、近視予防の対策についても大まかに説明していきます。
子どもの将来のためにも、近視予防対策として役立てていただければ幸いです。
子どもの近視を防ぐための予防と対策
子どもの近視を防ぐためにできることは、以下の4点です。
- 1日2時間の外遊び
- デジタル端末(ゲーム、タブレットなど)を見るときのルールを決める
- 規則正しい生活を心がける
- 早期発見に努める
それでは、ひとつずつ解説していきます。
外遊びの時間を作る
近視を防ぐために、まず実践してほしいことは、外遊びの時間の確保です。 外遊びが近視の予防に良い理由は、太陽光にあります。 太陽光の中でも、「バイオレットライト」という光がキーを握ってきます。
バイオレットライトとは、簡単にいうと、太陽光の中にある紫色の光です。(光波長360㎚~400㎚) 太陽光には紫外線や赤外線などありますが、その中でもバイオレットライトという光は近視の進行を抑制するといわれています。
バイオレットライトは「眼軸」の伸びを抑制する働きがあるという研究結果が報告されています。近視の進行を抑制する可能性があり、現代社会では屋内(オフィス内、車内、学校教室内等)にはバイオレットライトはほとんど存在していない一方、屋外には豊富に存在し現代社会でバイオレットライトを受けるためには屋外滞在時間を増やす必要があるという論文が複数発表されています。
参考文献:第5回日本近視学会総会抄録集P62 坪田和男 近藤眞一郎 姜效炎 鳥居秀成 森紀和子 根岸一乃 栗原俊英 東京都内における屋内外のバイオレットライトの定量的評価 2023
2019年のHoらのシステミックレビュー,メタアナリシスでは学校教育に十分な屋外活動時間を確保することで4~14歳のアジア人の学童の近視発症が50%、近視進行が32.9%、眼軸長伸展が24.9%抑制できると記載されています。このような抑制効果は屋外活動時間の増加に応じて高まり、最も効果的な成果を得るために1日120時間以上の屋外活動をすることで、両親が近視の小児でも近視の発症率は下がり、片親が近視の小児とほぼ同じ割合になるとされているため、学校で屋外活動の時間を確保することが推奨されているとあります。
参考文献:Ho CL,Wu WF,Liou YM:Dose- response relationship of outdoor exposure and myopia indicators :A systematic review and meta-analysis of various research methods,Int J Environ Res Public Heals 16:2595,2019
外遊びといっても、太陽光がジリジリと照りつける中、毎日かけ回るのは熱中症や日焼けも気になりますが、バイオレットライトの恩恵は日陰で過ごしていても受けられます。リスクと有益性のバランスを考慮し、安全で効果的な方法で取り入れる必要があるといえます。
デジタル端末を見るときはルールを決める
「20-20-20」ルールとは、パソコンなどの画面の見過ぎによる眼精疲労の予防方法です。
この3つの「20」とは、 ①デバイスの画面を「20分」見るごとに ②「20秒」以上 ③「20フィート(約6m)」以上離れた場所や景色を見ることです。
スマホやテレビゲームなど、現代社会の子ども達には、デジタル端末は身近な存在です。
しかし、近視を予防するためには、デジタル端末使用時にはルールを設ける必要があります。
具体的には、以下の点が必要であると推奨されています。
※文部科学省の児童生徒の健康に留意してICTを活用するためのガイドブックがあります
- 画面は30cm以上離す
- 30分使用したら1度目を休ませる
- 正しい姿勢で使用する
- 使用持続時間は1日30~60分とする
- できる限り毎日は使用しない
- 続けて使用したい場合は、1時間使用につき10分は間をあける
以上の内容について、子をもつ親なら、 「わかってはいるけど、毎日はなかなかむずかしい。」 「何回言っても、直らないからイヤになっちゃう。」 などと思いますよね。
すべて完璧にこなそうと思うと親も疲弊してしまいます。 できるところから、ひとつずつ実践してみてください。
2019年WHOから乳幼児に関する運動とスクリーンタイムに関するガイドラインが発表されています。スクリーンタイムとは「TV、ビデオ、ゲーム機器、スマホなどを見て体を動かさずじっと座っている時間のことです。WHOでは「2歳未満の子供には推奨されない」 「2歳から4歳までの子供では1日1時間まで」子供はたくさん体を動かすことが強く推奨されるとしています。
参考文献:あたらしい眼科第37巻第5号 549-557 近視進行予防に対する学校保健の取り組み 柏井真理子
規則正しい生活を心がける
近視は、規則正しい生活を送ることでも予防できます。 夜寝る時間が遅く、睡眠時間が短いと、疲れた眼を回復する時間も短くなります。 疲れた眼のままでいると、近視が進行しやすくなることも。 また、遅くまで起きてゲームなどをしている場合は要注意です。 日中よりも暗い環境で行うことが多いため、近視が進む可能性が高くなります。
早期発見に努める
子どもの近視を進行させないためには、早期発見も重要となってきます。 近視の場合、遠くのものが見えずらいので、よく見ようとする場合、眼を細めますよね。 眼を細めるクセがついてしまうと、近視が進行しやすくなることもあります。 子どもの様子で、「なにかおかしいな」と思ったら、すぐに眼科を受診することをおすすめします。 早期に治療することで、近視の進行を抑えることができます。
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近視の原因とは
(近視になる理由)
近視が進む理由は明らかにはなっていませんが、近視の進行は遺伝要因と環境要因の相互作用であるとされています。
なかでも現代のライフスタイルの変化の影響は大きく、最近ではスマートフォンやゲームなどの普及による視影響の変化によるといわれることが多いです。
近視進行の原因には2種類の仮説があり、一つは網膜面における遠視性の焦点誤差(遠視性デフォーカス)〔像が周辺部の実際の眼の長さ(眼軸)の網膜より後方に結像された時その収差を眼鏡やコンタクトで矯正を行うことで眼軸長が伸長し軸性近視が進むことです〕ともう一つは近方視でピントを手元に調節することで眼球に機械的緊張がかかり、その結果眼軸が前後方向に伸展し近視化が進むという機械的緊張によるものが上げられます。
参考文献:あたらしい眼科第37巻9号P1071 山田裕華 生野恭司 近視進行抑制治療における保護者対応
近視になる原因は「遺伝的要因」と「環境的要因」です。 原因を知ることで、予防できることもあるかもしれませんよね。 それでは、ひとつずつ解説していきます。
遺伝的要因
遺伝的要因は、両親から受け継いだ情報によって発生するか否かが決定します。 よって、両親とも近視であった場合、近視になる確率はあがることになります。 両親とも近視であった場合は、約5倍の確率で。 片親が近視であった場合は、約2倍の確率で近視の確率があがります。
環境的要因
環境的要因は、生きていく中でどのような行動を取ったかで発生するか否かが決定します。 前述したように、デジタル端末に触れる機会が多く、近くでものを見てしまう・長時間使用するなどが関係することも。 紹介した近視を防ぐための方法を実践することで、進行を抑えられる可能性もあります。 「我が家の子どもは、近視になる可能性が高いかも…。」 と不安のある方は、ぜひ実践してみてください。
子どもは近視が進みやすい
年齢が低い内に近視になると、進行しやすいと言われています。 子どものうちは、身体のさまざまな場所が発達の途中です。 眼の成長もまた、発達過程であり、身体の成長とともに発育していきます。 近視になりやすい環境にいると、「眼軸」の長さが伸びていき、近視の進行は20代後半まで続くと言われています。 悲しいことに、近視は一度なると治ることはありません。 一度なると、あとはどんどん進行していくだけになのです。 大人になっても眼が健康でいるためには、子どものうちから進行を抑制することが大事になってきます。
わが国と同じ東アジア系人種を対象としたWangらの研究で、近視の発症率は小学校時から中学就学時までおよそ20~30%と高い割合を維持し、小学5年生でピークを迎え、その後中学校でやや低下することから、小学校から中学校の間は全般的に近視の発症予防を心掛け、小学校5年時で最も発症予防に注意が必要であると言えます。
参考文献:Chuka SY ,Sabanayagam C, Cheung YB et al : Age of onset of myopia predicts risk of high myopia in later childhood in myopic Singapore children. Ophthalmic Physiol Opt 36 :388-394,2016
近視は自然に治ることはありません。また全ての近視が心配すべき病気というわけでもありません。ですが近視度数の進行の速さなどが心配な時は抑制方法を考えていく必要があります。
近視になってしまったら
「もう眼が悪くなってるみたい」 「進行しないためにはどんなことをすると良いの?」 という方もいると思います。
近視がこれ以上進まないための対策について紹介していきます。
具体的には、以下の3点です。
- 眼科へ受診
- 度の合っためがねを使用する
- 目に良い食品の摂取
ひとつずつ紹介していきます。
眼科へ受診
まず、近視を疑ったら眼科に受診することをおすすめします。
近視進行を抑制すべきと思われる場合、眼科では主に以下3点の治療が行われています。
- 低濃度アトロピン点眼での近視抑制
- 特殊なめがねやコンタクトでの近視抑制
- オルソケラトロジーレンズでの矯正
- レッドライトでの近視抑制
眼科で上記4点のような治療をしますが、近視が治るわけではありません。 主に行っていることは、近視の進行抑制です。
度の合っためがねを使用する
近視に気づいたら、正しい視力を測り度の合っためがねを着用することがとても大事です。近視を放っておくと、眼を細めて遠くのものを見るようになります。 その結果、学習効率が悪くなったり近視が進行してしまう場合もあります。
子どものうちは調節力と呼ばれる眼のピント調節機能が豊かなので、正確な度数の検査はとても難しいことにも注意してください。子どもの度数は眼鏡店でなく眼科で検査するべきとお薦めしています。
めがねの装用を嫌がる保護者さんもいらっしゃいますが、子どもの大切な成長期間を支える基本的で最も安全な手段としてめがねを重要視しましょう。
関連記事)こども世代のめがね、かけるべき?現役視能訓練士が解説
目に良い食品の摂取
近視の進行を抑制する食品成分もあります。今回ピックアップするのは
- クロセチン
です。
「クロセチン」はサフランやクチナシに含まれている食品成分です。 この成分ですが、近視進行抑制に効果があるとされています。 サフランやクチナシを含んでいる料理といってもすぐには思い浮かばないですよね。
そのため、眼科ではサプリメントとして推奨されています。
まとめ
今回は、子どもの近視を防ぐための予防や対策について解説していきました。
近視を防ぐための予防と対策は、以下の4点です。
- 1日2時間の外遊び
- デジタル端末を見るときはルールを決める
- 規則正しい生活を心がける
- 早期発見に努める
近視の原因は、遺伝的要因と環境的要因があります。 子どものうちに近視になると進行が早いため、環境的要因を少しでも減らし、予防しておくことが大事です。
近視になってしまった場合、進行を抑制するための対策は以下の3点です。
- 眼科へ受診
- 度の合っためがねを使用する
- 目に良い食品の摂取
子どもの近視は、少しの心がけで進行を予防・抑制できる可能性があります。 しかし、今回紹介した対策を毎日欠かさず行うのは大変ですよね。 もちろんすべてを完璧にこなせる人はいません。 まずは休日の30分だけ、気分転換に家族で外遊びをするところからはじめてみるのはいかがでしょう。
臨床で働く眼科スタッフとして
最近は就学前の幼児までもスマートフォンを使いこなしている姿を眼科でもよく見かけます。スマートフォン使用開始の若年化に伴い、近視発症年齢も早まるのではないかと感じています。
眼科医をはじめ私たち眼科スタッフは、眼科検査に留まらず、クリニックに来院する育児に奮闘する保護者の立場や心情を理解、共感しつつ、寄り添うことが必要であると考えます。
近視進行抑制治療には様々な種類があり、どの治療が正しいということではなく、それぞれにメリット/デメリットがあります。私たち眼科スタッフにも正しい理解が必要であり、お子さんの眼の所見/個性等に合ったものや規則正しい生活やスマホルール等アドバイスをしていく必要があると考え、日々研鑽しています。
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この記事を監修した人
松井萌珠さん
看護師・視能訓練士(広石眼科医院) / 北九州市出身 2008年看護師免許取得
病院勤務を経て医療法人広石眼科医院入職(現職)。眼科検査の重要性を痛感,勤務しながら九州保健福祉大学で学び2021年視能訓練士免許取得。小児眼科を辰巳貞子先生(小児眼科医)平良美津子先生(視能訓練士)に師事。眼科勤務に邁進しつつ、みるみるプロジェクトアンバサダーとして子どもの眼の啓発活動にも取り組む。