子供の目が悪くなる?原因と対策|親の努力で予防は可能なのか
視能訓練士の平良美津子です。
今回は、小児眼科の外来で保護者からよく聞かれる質問と、いつもお答えしている内容をご紹介したいと思います。きっと多くの方が同じような疑問をお持ちではないでしょうか。
まずは、誤解なく基本的なところをご理解いただくことが、子どもたちの眼や視力を守り育てる一歩だと感じております。
前提!「目が悪くなる」と「裸眼視力が低い」とは違う
「目が悪くなる」というけれど
「目が悪くなる」という表現が一般的に使われていますよね。これは「見えかた(=視力)が悪くなる」という意味で皆さん使われていると思います。
来院された保護者様と眼科検診後にお話しするのですが、
『また目が悪くなってるでしょ』
『うちの子、目が悪くなってますか?』
と聞かれることが多いです。
そういうとき私は、「お子さんは、去年より視力が悪くなっている可能性はあるけど、見やすいレンズをかけると視力はしっかりでます。なので見る力は良好です!」とお伝えするようにしてます。
このようにお話すると「見えてないのに良いってどういうこと?」と不思議な顔をされる保護者も少なくありません。
大事なのはまず矯正視力
裸眼視力こそ悪くなっても、メガネやコンタクトで「しっかり見える!」(=矯正視力が良好)ということは、視覚発達期に正常な目の発達を遂げているということの証明にもなります。
この視覚発達期において、メガネやコンタクトで治療や訓練に取組んでも視力が伸び悩む/横ばい傾向が何年も続く。そういう状況に直面した時に、「弱視」と診断されることがあります(矯正視力が1.0に達しないなど)。
また年齢に関わらず、何らかの眼の疾患があり矯正視力が低い場合は、いわゆる“目が悪い”という表現になるのかもしれません。
つまり、まずご理解いただきたいのは
☆裸眼視力が低い=目が悪い ではないということ。
☆大事なのは良好な矯正視力であること。
の2点です。
先ずは眼科側と保護者様が、「目について同じ認識」を共有することがとても大事だと思っています。
~眼科でよくある保護者の質問~
Q.子供の目が悪くなる原因はなんですか
たしかに、学童期を中心に子どもの「裸眼視力が低くなる」ことはあります。
弱視や他の眼の疾患がない場合、「目が悪くなる」ではなく「裸眼視力が悪くなる」と表記し、その原因をお話したいと思います。
裸眼視力が成長や発達と共に悪くなっていく主な原因の大部分は「近視」です。他にも「遠視」「乱視」が原因で裸眼視力が悪くなることもあります。
これら「近視」「遠視」「乱視」を屈折異常と総称しますが、一般的にほとんど全ての人は多かれ少なかれ、何らかの屈折異常を持っているといっても過言ではありません。
特に近年指摘されているのは、世界中で近視の人口が増加しているという事実です。
Q.親の努力で近視の予防は可能なのか
「近視」の発症を予防する(全く近視にならないままにする)ことは現段階では難しいでしょう。ただし今後の研究次第では可能になるかもしれません。
現在のところ、残念ながら一度発症した「近視」が治る(正視に戻る)ことはありません。
近視は発症してから、度が進む(=近視が強くなる)傾向にあります。
強すぎる近視は将来の眼疾患の要因になるため、
近視をあまり強く進ませないという
近視進行抑制治療の研究が世界中で行われ、進歩しています。
保護者様には、
「近視にしないための予防努力」ではなく、
「強すぎる近視になるべく進ませない生活習慣努力」
という方向にお考えいただければと思います。
Q.子どもの裸眼視力が低下するのを防ぐには
第一に、お子さんの視力や屈折異常の程度を正しく把握していくことが大事です。私はこれを「眼のコンディションチェック」と表現しています。
まず、いまのコンディションを把握しないと対策も立てようがありませんよね。目に何も異常がなくても定期的に眼科を受診し、現在のお子さんの「目の状態」をチェックしてもらいましょう。
いま現在、お子さんの目や視力がどういう状態であるのか、今後の目安にもなってきます。
特にご両親が近視ならば、お子さんの近視発症のリスクも高くはなりますし、目について意識することは大事なことなのです。
Q.眼科の受診はどれくらいのサイクルで?
弱視治療などで通院している場合を除き、定期的なお子さんの眼のコンディションチェック(見えかたチェック)サイクルは最低年1回!とお伝えしています。
ただし、1年間(12か月間)の短い間に驚くほど屈折異常が変化する(度数が急激に変わる)こともあり、そういったお子さんにもたくさん出会います。
そのため、保護者様から観察してお子さんに見えにくそうな仕草があれば、半年に1回の受診でも決して大げさではありません、ぜひ受診ください。
Q.眼科受診が特に重要なタイミングはありますか?
幼稚園保育園への「入園前」
小学校/中学校への「入学前」
を特に重要な眼科受診の節目として提案しています。
このタイミングで思わぬ弱視が発見されたり、想像以上に裸眼視力が低かったりして、眼鏡が必要だったり治療が必要(弱視の場合)することがあります。
そのため、節目に際しては直前ではなく、入園入学の半年前ぐらいまでに眼科受診をしてください。眼鏡や治療が必要な際も、良い環境を整えて入園入学に臨むことができます。
この記事を書いた人
平良 美津子(たいらみつこ)さん
視能訓練士。北九州市出身/大分視能訓練士専門学校卒業。北九州市立若松病院などで勤務後、医療法人大里眼科クリニック(北九州市門司区)勤務、師と仰ぐ辰巳貞子先生のもとで小児眼科を学ぶ。福岡市立こども病院眼科を経て、一般社団法人みるみるプロジェクトを有志らと共に設立。検査/訓練に立ち会った患児はのべ7万人以上。現在複数の眼科クリニックで勤務。制作を手掛けた弱視治療用管理手帳【みるみる手帳】はキッズデザイン賞受賞。後進の視能訓練士育成/異業種交流(弱視就学支援・eスポーツ研究等)/弱視早期発見活動に積極的に関わる。日本視能訓練士協会会員/日本弱視斜視学会会員/一般社団法人みるみるプロジェクト参与/福岡eスポーツリサーチコンソーシアム参画会員。
▷みるみるネットにて視能訓練士平良のみるみる日記 好評連載中