視力低下の原因?目と酸素不足の関係とコンタクトレンズ
はじめに
「最近視力が悪くなった気がする」「目がショボショボして疲れる」こんな経験をしていませんか。
私たちがよく耳にする視力低下の原因は、
- 目の使い過ぎ
- 度の合わない眼鏡やコンタクトレンズの利用
- 照明の明るさなどの環境
- スマホやパソコン、タブレットのブルーライト など
このように多岐に渡り、様々な要因が絡み合っています。
コンタクトレンズユーザーの視力低下は「目の酸素不足」も大きく関係があります。
今回は、目と酸素の関係や、目の酸素不足を防ぐための対策解説です。 目の酸素不足は最悪の場合失明の危険もあるため、関係性と対策を知り、目の健康を守りましょう。
目と酸素の関係とは
画像引用:目のしくみと働き | 岡山県津山市 メガネのカメイ (megane-kamei.co.jp)
酸素は、私たちが生きるために必要なものであり、身体中の細胞を活動させる大きな役割があります。 人の目はただ物を見るだけでなく、色や明るさを判別したり、具体的な形を見たり、物との距離感など立体感を捉えたりなど機能は様々。 目を見れば血管がうっすら見えるほどに多くの神経が集中しており、身体の中でも大量の酸素が必要な器官です。
実は、目は「角膜」という黒目の部分から涙を通して、酸素を取り込んで呼吸しています。 この呼吸がうまくいかず、充分な酸素が目に行き届かないと、眼球内の細胞の死滅や目の血管に異常が生じ、視力低下や最悪の場合失明してしまうことも。 人の身体に酸素が必要なように、目が生きて活動するためにも酸素が必要なのです。
酸素不足になる原因
角膜は多くの酸素を必要とし、大気から直接酸素を取り込んでいますが、酸素不足に陥るケースがあります。
角膜が酸素不足になると、
- 角膜浮腫
- 角膜上皮障害
- 輪部充血
- 角膜血管新生
- 角膜内皮細胞障害
- 角膜の菲薄化
- 角膜変形
など様々な合併症を招くことが報告されています。
参考文献)あたらしい眼科35巻11号P1474
角膜の中でも慢性的な酸素不足と特に関係があるのが角膜内皮細胞という部分です。今回は角膜内皮細胞に重点を置いて大まかに説明していきます。
再生しない、大切な角膜内皮細胞
角膜内皮細胞は角膜の最も内側にあり、前房水(血管のない角膜や水晶体に酸素・栄養を供給する)と角膜実質との間で水分や電解質の出(ポンプ機能)と入(バリア機能)を調節して角膜の水分量を一定に保ち、角膜全体の透明性を維持する重要な役割を担っています。
角膜内皮細胞に再生機能はありません。
なくなってしまった場所を補うために残った内皮細胞の1つ1つが大きくなってしまいます。
正常の角膜内皮細胞密度は2,500~3,000個/㎟ 程度。
角膜内皮細胞が一定数以上減少すると房水が角膜実質に吸い込まれて浮腫を起こし角膜全体の透明性が低下し、角膜が混濁し視力低下を招きます。
参考文献:視能学第2版213ページ
コンタクトレンズの無理な装用
角膜内皮細胞が大きく減少してしまう原因として、白内障手術などの眼内手術、レーザー虹彩切開術、加齢、外傷、遺伝性のもの、そしてコンタクトレンズの無理な使用が挙げられます。
コンタクトレンズ装用時は裸眼のときよりも目への酸素供給が少ないのです。
特に、角膜をすっぽりと覆うソフトコンタクトレンズや、酸素透過性が低いカラーコンタクトレンズを無理に長時間装用したり、使用期限の過ぎた物を使用し続けた場合、角膜に大きなダメージを受けることがあります。
目が酸素を取り入れるため角膜にまで血管を伸ばしてしまう「角膜新生血管」になる可能性があり、視力低下や角膜の濁る原因になります。
このように、便利で快適であるはずのコンタクトレンズが、目の酸素不足原因となり得るのです。
角膜の酸素不足は、
- コンタクトレンズを始める際は必ず眼科を受診すること
- コンタクトレンズからメガネに変える時間を増やす
- 酸素透過性に優れたコンタクトレンズに変える
が対策として推奨されています。
コンタクトレンズからメガネに変える(メガネの時間を増やす)
まず、コンタクトレンズを利用している場合は、眼鏡をかけて過ごす時間を増やすなど生活サイクルを見直してみましょう。 便利さやおしゃれ目的でコンタクトレンズやカラーコンタクトレンズを利用する人が増えていますが、サイズや酸素透過性の問題で目の酸素不足を引き起こしやすいデメリットが。
カラーコンタクトよりも髪型を買えた方が印象が大きく変化するという報告もあります。
参考文献:あたらしい眼科35巻11号P1469 月山純子 カラーコンタクトレンズの処方
目が酸素を十分に取り入れながら視力補正をするには、可能なら眼鏡が効果的です。
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まとめ
本記事では、目と酸素不足の関係を解説しました。
目は多くの情報を処理する器官であり、多くの酸素が必要な器官でもあります。 目の酸素不足の原因は身近に潜んでおり、視力低下など目の異常を引き起こす危険も。
コンタクトレンズを正しく装用し、メガネを上手に取り入れながら角膜の健康維持に注意しましょう。
実際の眼科現場では
わたしが勤務しているクリニックは、院長の方針で症状の有無に関わらずコンタクト装用中の患者さんには全員スペキュラーマイクロスコープという検査機械で角膜内皮細胞の状態を測定するようにしています。
角膜内皮細胞の状態によってはコンタクトそのものをできないこともあります。特に初めてコンタクトを始める方は眼科受診を強くお勧めします。
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この記事を監修した人
松井萌珠さん
看護師・視能訓練士(広石眼科医院) / 北九州市出身 2008年看護師免許取得
病院勤務を経て医療法人広石眼科医院入職(現職)。眼科検査の重要性を痛感,勤務しながら九州保健福祉大学で学び2021年視能訓練士免許取得。小児眼科を辰巳貞子先生(小児眼科医)平良美津子先生(視能訓練士)に師事。眼科勤務に邁進しつつ、みるみるプロジェクトアンバサダーとして子どもの眼の啓発活動にも取り組む。