子どもの近視進行抑制のために!視力低下と目薬の関係と正しい使い方

子どもの近視進行抑制のために!視力低下と目薬の関係と正しい使い方

日頃から子どもの裸眼の視力低下を心配する親御さんも多いことでしょう。

この記事では、裸眼の視力低下と目薬について紹介し、正しい使い方を身につけるためのポイントを解説します。子どもの健やかな成長に役立つ情報をお届けします。

視力低下とは?

まず視力には「裸眼視力」「矯正視力」とがあります。

裸眼視力は文字通り裸眼で見た時の視力。

矯正視力とはメガネなどで矯正したときの視力を指します。

眼科ではどちらも測ります。矯正視力はある度数を入れてどこまで視力が上がるか?レンズで得られる最高視力はどれくらいか?をみます。たとえば白内障など何らかの眼疾患がある場合、この矯正視力が低下していることが多く、診断の材料になります。

裸眼視力が低下しても、矯正視力は以前と変わらず良好な視力、という方もとても多いので、まずはこの二つの視力を混同しないように理解することが大切です。

近視・遠視・乱視などを屈折異常と呼びますが、この屈折異常はほとんどの人が持っています。(程度の大小/強弱の差はあるが)

この屈折異常の度数があがると、裸眼視力の低下に繋がります。

現在特に注目されているのは近視による裸眼視力の低下。もっとわかりやすく言うと、近視の度数が進むという表現になるかもしれません。

近視は生活習慣でも進行することがわかってきています。

強すぎる近視は将来の眼疾患が懸念されるため、子どもの近視が進み過ぎないよう、近視進行抑制という治療が眼科で行われることがあります。 

目薬の役割

眼科医は疾患治療や症状軽減を目的に、目薬(点眼薬)を処方しています。

このなかには、近視進行を抑制するために処方される目薬も存在します。

近視にはいくつか種類がありますが眼球が楕円状に伸び(眼軸長が伸びる)ピントの位置がずれることで生じる軸性近視の場合が多く、一度眼軸が伸びてしまうと戻ることはありません。そのため、眼軸の伸展を抑えることが近視の進行を抑制する上で重要です。

今回は近視進行抑制に使われる低濃度アトロピンについて説明していきます。

低濃度アトロピンとは

アトロピンは現時点で唯一と言って良い近視進行抑制薬物です。副交感神経の末端などから放出される神経伝達物質であるアセチルコリンで刺激されるムスカリン受容体を阻害し、散瞳、調節麻痺、心拍数の増大などを起こすナス科植物のベラドンナ由来の有機化合物です。 

副作用がより少なく近視進行を抑制する効果が期待できるとして、「低濃度アトロピン」が眼科医から評価されています。

0.05%、0.025%、0.01%のいずれの低濃度アトロピン点眼であっても近視進行抑制効果があり、副作用もより少なく、その効果は濃度依存性(濃度が高い方が効くということ)であると複数の論文で報告されています。

参考文献:Li FF, Zhang Y, Zhang X et al : Age effect on treatment respones to 0.05%,0.025%,and 0.01%atropine:lowconcetration atropine for myopia progression study.Ophthalmology 2021 doi:10.1016/j.optha.2020.12.036

 

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目薬の注意点

低濃度アトロピン(2023年現在、自由診療)を用いた近視進行抑制治療をおこなう眼科医療機関が増えています。しっかりと受診している眼科からの指示に従ってください。

①低濃度アトロピンはあくまで近視進行を抑制するためのもので完全に近視の進行が止まったり、近視そのものがよくなるわけではないことを理解していただく必要があります。

②安定した効果を確認するためには2年間以上の継続が推奨されています。

③低濃度アトロピン(マイオピン)は自由診療であるため、推奨期間もあり、コストがかかることを理解していただく必要があります。

(使用法)

1日1回就寝前に1滴点眼

(注意点)

低濃度のアトロピンであるため、副作用(散瞳…瞳孔が拡がっている状態)による眩しさ、ピントを合わせる機能の低下による読み書きの困難、アレルギー症状等は少ないとされています。

それでも眩しさや手元のピントが合いにくい等の症状が発生する可能性もありますので、そのデメリットが影響しない就寝前に点眼することが推奨されています。

 

視力低下予防には目薬だけでは不十分

近視進行による裸眼視力の低下は近年ますます深刻な問題となっていますが、目薬だけで予防することには限界があります。

2019年のHoらのシステミックレビュー、メタアナリシスでは学校教育に十分な屋外活動時間を確保することで4~14歳のアジア人の学童の近視発症が50%、近視進行が32.9%、眼軸長伸展が24.9%抑制できると記載されています。このような抑制効果は屋外活動時間の増加に応じて高まり、最も効果的な成果を得るために1日120時間以上の屋外活動をすることで、両親が近視の小児でも近視の発症率は下がり、片親が近視の小児とほぼ同じ割合になるとされているため、学校で屋外活動の時間を確保することが推奨されているとあります。

参考文献:Ho CL,Wu WF,Liou YM:Dose- response relationship of outdoor exposure and myopia indicators :A systematic review and meta-analysis of various research methods,Int J Environ Res Public Heals 16:2595,2019

さらに、過度のスマートフォンやパソコンの使用を控え、定期的な目の休憩を取るようにしましょう。

Rose KAらの研究で小児期の近視進行は以前より遺伝(両親が近視であれば、両親が近視でない人の7~8倍近視の頻度が高くなる)によるものが大きいとされていますが、遺伝だけでなく環境因子と関連し、都市部の方が近視は早く進行するとされています。30㎝以内に近づいて作業すること、また30分以上連続して近業を続けるとは近視の進行を早めると報告されています。 

参考文献:Rose KA,Morgan IG ,Kifley A et al :Rolr of near work in myopira :findings in a sample of Australian school children. Invest Ophthalmol Vis Sci49 :2903-2910,2008

近視を予防するためには、デジタル端末使用時にはルールを設ける必要があります。

具体的には、以下の点に注意が必要であると推奨されています。

※文部科学省の児童生徒の健康に留意してICTを活用するためのガイドブックより

  • 画面は30cm以上離す
  • 30分使用したら1度目を休ませる
  • 正しい姿勢で使用する
  • 使用持続時間は1日30~60分とする
  • できる限り毎日は使用しない
  • 続けて使用したい場合は、1時間使用につき10分は間をあける

視力低下は人間の身体にとって深刻な問題であり、目薬だけで対応することは不十分です。生活習慣の改善や栄養バランスの取れた食生活を心がけることで、健康な目を維持していきましょう。

 

子どもの眼や見えかたが心配は場合は、早期に眼科医に相談することが最も重要です。いまの眼のコンディションを検査しないままに対策することは出来ないからです。

近視進行抑制では、小児の近視の進行が緩やかになる効果が報告されているサプリメント(ロートクリアビジョンジュニアEX®)も実際に眼科限定で発売されています。

※服薬対象年齢は6歳以上

※効果を安定させるために6ヶ月以上の服用が望ましいとされています。

 

まとめ|目薬の正しい使用と生活習慣の改善で裸眼視力低下を予防できる可能性がある

今回は近視進行抑制と目薬についてまとめました。

まずは眼科でいまのコンディションをチェックすることが大切。

その状況により眼科医に相談しましょう。

また、長時間のスマートフォンやテレビの使用、運動不足、不規則な生活なども子どもの裸眼視力低下を引き起こす原因となることがあるため、予防にはこのような生活習慣の改善も考えましょう。

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 この記事を監修した人

松井萌珠さん

看護師・視能訓練士(広石眼科医院) / 北九州市出身 2008年看護師免許取得

病院勤務を経て医療法人広石眼科医院入職(現職)。眼科検査の重要性を痛感,勤務しながら九州保健福祉大学で学び2021年視能訓練士免許取得。小児眼科を辰巳貞子先生(小児眼科医)平良美津子先生(視能訓練士)に師事。眼科勤務に邁進しつつ、みるみるプロジェクトアンバサダーとして子どもの眼の啓発活動にも取り組む。

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