子どもの目を守るには?親ができる対策や注意すべき点を紹介
子どもの目を守るには、目に優しい環境づくりと目の異常に気づける注意深さが重要です。時代がデジタル社会に変わっていく中で、目の健康への配慮はますます必要になってきています。小さい子どもは目の異常に気づきにくいので、親はとくに大きな役割を担うでしょう。
この記事では、子どもの目を守るために親ができる対策や注意すべき点を紹介します。具体例も紹介するので、実生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。
発達途中の子どもの目を外部環境から守ろう
子どもの目は発達途中で、大人の目とは異なります。また子どもの目の異常は、できる限り早い時期に気づいてあげることが大切です。子どもの目を守るために、以下の2点を知識として覚えておきましょう。
- 子どもの視力は0歳〜5歳で大きく発達する
- 紫外線量が長期的に増加している
子どもの視力は0歳〜5歳で大きく発達する
子どもの視力や視覚機能は、出生から5歳頃までに急速に発達するといわれています。まず生後2〜3か月では、ものを見たり動くものを追えたりするようになるでしょう。生後6か月になるとものに手を伸ばすようになり、1歳頃で視力は0.3程度まで発達します。
1歳をすぎると視力はグングン上がり、3〜5歳頃までに視力は0.8〜1.0くらいまで上昇します。3歳頃からものを立体で識別できるようになり、6〜8歳になると大人と同じ視機能の完成です。
もし0〜5歳の視機能発達の重要な時期に、鮮明な映像が目に届かないと、視力の正常な発達が妨げられてしまいます。視力が正常に発達するためには、早期に遠視や乱視、斜視などに気づいて治療することが大切です。
子どもの目を増加する紫外線から守ろう
子どもの目を守るためには、紫外線対策に気を配りましょう。紫外線は長い年月をかけて蓄積されるため、子どもの頃のダメージが大人になってからの病気につながることがあります。気象庁が公表している「紫外線の経年変化」を見てみると、つくばで計測した紫外線量は10年あたり4.1%増加していることがわかります。
1990年以降、日本での紫外線量は長期的に増加傾向です。目だけでなく、肌を守るためにも紫外線には注意を払ってください。
また強度近視になると、近視性黄斑症や網膜剥離、緑内障などのリスクが高まることがわかっています。将来のためにも、子どもの頃から様々な面で目に優しい環境を作るようにしましょう。
*参考 紫外線の経年変化
子どもの視力を守るためにできること
子どもの視力を守るためには、目に優しい環境づくりがポイントです。屋内環境を整えて、屋外遊びを積極的に取り入れることを意識しましょう。
6つのポイントで子どもの目と視力を守ろう
子どもの目を守るためには、適切な環境を理解しておくことが重要です。子どもだけにまかせずに、大人も一緒になって以下のポイントを習慣化してください。
まずは
- テレビやスマホ、タブレットなどを正しく使う
ことです。テレビは2m以上、スマホやタブレットは40cm以上離して見ると、目の負担が減ります。30分間を目安に5分ほどの目の休憩を入れることも大切です。
その他にも
- 勉強や読書は正しい姿勢で30cm以上目を離す
- 屋外での活動を増やし、自然光の下で過ごす時間を確保する
- バランスの取れた栄養摂取を心がける
- 部屋全体を明るくする
- 定期的な眼科検診を受け、早期発見と対策をおこなう
といったこともポイントです。
屋外遊びで近視対策をしよう
近視対策として近年注目を集めているのが、屋外遊びです。屋外の明るい環境で多く過ごす子どもは、近視になりにくい可能性があると考えられています。
仮説では、屋外の光が網膜内に入ると近視進行が抑制されるといわれており、それが世界中の眼科医の研究によって証明されつつあるのです。台湾など東アジアの一部の国では、小学生の授業を日光下で積極的におこなうことで、近視対策に成功しつつある事例が報告されています。
近視予防の屋外活動は、ひなたに出る必要はありません。日陰でも効果はあり、曇りや雨の日でも十分な光を浴びられます。日差しの強いときには、紫外線や熱中症の対策を忘れないようにしましょう。
屋外遊びは健康面でも大きなメリットがあります。基礎体力がつき、健康も維持しやすくなるでしょう。その他に、屋外遊びは脳にも好影響を与え、コミュニケーション能力や学習能力の向上も期待できます。
長時間のスクリーンタイムを制限し、目を休めよう
スマホやタブレット、パソコンなどの視聴時間を、スクリーンタイムと呼びます。長時間のスクリーンタイムは眼精疲労や視力低下のリスクを高めることがわかっています。そこで注目を集めているのが「20-20-20ルール」です。
「20-20-20ルール」とは、20分ごとに20フィート(約6m)離れたところを20秒間見るというものです。ピントを合わせ続けた目を定期的に休めて、目を疲れないように使うことを目的としています。
重要なのはルール通りにすることではなく、目を休めることです。時間は30分ごとでも効果はありますし、6mの距離を測る必要もありません。タイマーやアプリなどを活用して、目を休めることを徹底しましょう。
多くのスマホやタブレットには、スクリーンタイムの制限を設ける機能があります。機能を有効活用し、長時間の使用を制限したり、就寝前の使用を避けたりするようにしましょう。
デジタル化で目の環境が悪化している
デジタル化が進む中で、子どもの目の環境は大きく変わりつつあります。デジタルデバイスに触れる時間が増える一方で、外遊びの時間は減少傾向です。目の環境は悪化し、子どもの裸眼視力1.0未満の割合は年々増えています。
ここでは、ICT教育の中で目の健康を守るための具体例を紹介します。家庭で対策できることは、積極的に実行に移すといいでしょう。
子どもの裸眼視力1.0未満の割合が増加
2021年度におこなわれた文部科学省の学校保健統計調査によると、子どもの裸眼視力1.0未満の割合が増加傾向にあることがわかりました。中学校では過去最多の60.66%となり、小学校では36.87%、幼稚園では24.81%となりました。
10年前の2011年度と比較すると、中学校は9.07%増加、小学校は11.49%増加、幼稚園は0.67%減少となっています。このことから、とくに小学校以降で目の環境に注意を配るべきだとわかるでしょう。
*参考 学校保健統計調査
ICT教育の中で目の健康を守るには?
義務教育を受ける児童生徒のために1人1台デジタルデバイスを導入する「GIGAスクール構想」が、文部科学省によって打ち出されています。「GIGAスクール構想」は個別に最適化された教育の実現が期待されていますが、一方で児童生徒の視力への影響が懸念されているところです。
ICT教育は、これまでの教育と比べると目に負担がかかります。目の負担を軽減するには、児童生徒や教職員、保護者がそれぞれ目の健康に配慮することが大切です。具体的には以下のようなことに気を配りましょう。
- 正しい姿勢をとる
- 画面との距離を確保する
- 画面への映り込みや反射を防止する
- 教室の明るさを調節する
- 適切なスクリーンタイムを管理する
- 休憩をはさむ
- 屋外活動を勧める
デジタルデバイスの教育面における使用法を教えるだけではなく、目の健康を守るためのガイドラインづくりも、教育現場には求められています。
「アイケアークリップ」は眼鏡に装着するだけで視力や姿勢の改善をサポートしてくれるアイテムです。姿勢の悪さ・部屋の暗さを察知して振動で警告してくれます。日常的に正しい目の習慣を身に付けましょう!
子どもの目をケアするには、健康的な生活が重要
子どもの目を守るためには、目の環境だけに配慮すればいいわけではありません。身体の健康と同じようにバランスのよい食生活や適度な運動、規則正しい生活を送ることが重要です。子どもが健康的な生活を送れるように、ストレスの少ない環境も整えましょう。
子どもの目を食事と運動で守ろう
身体の発達と食事が関係しているように、視力の発達と目の健康も食事に影響を受けています。目の健康によい栄養素としてビタミンA・C・Eや亜鉛などが推奨されていますので、それらの栄養素を含んだバランスのよい食事を心がけましょう。
ビタミンAや亜鉛は、緑黄色野菜やうなぎ、レバーなどに豊富に含まれています。ビタミンC・Eを摂取するには、ブロッコリーやほうれん草、エビ、大豆などを食べるといいでしょう。
適度な運動も、目の健康には重要です。運動によって身体全体の健康が促進され、間接的に目の健康に好影響を与えます。
屋外で運動をすると、自然光で十分な光を目に取り入れることで、視力保護の効果も期待できます。オーストラリアの研究所では、1日2.8時間以上屋外で活動している子どもは近視のリスクが抑制されるという研究結果が出ました。
*参考 Outdoor Activity Reduces the Prevalence of Myopia in Children
子どもの目のために規則正しい睡眠をとろう
子どもの目を守るためには、十分な睡眠をとって、規則正しい生活リズムを維持することが重要です。目が疲れているときに睡眠が不足すると、視力低下や目の充血などのリスクが高まります。たとえ目が疲れていなくても、睡眠不足は眼精疲労を引き起こす恐れもあります。
子どもが快適に睡眠が取れるように、デジタルデバイスのスクリーンタイムを適切に管理するように心がけてください。良質な睡眠には、子どもがストレスをうまく発散・軽減できるようになることも重要です。子どもが安定した楽しい生活を送れるように、家族で協力しあいましょう。
子どもの目の病気や予防のために知っておきたいこと
子どもは目の異常を自らで判断できにくいので、大人が普段から注意深く観察しておく必要があります。子どもの目の異常を見逃さないようにして、もし異常を発見したら、できるだけ早く眼科を受診してください。
子どもが発信する目の異常サインに注意を払おう
子どもは目が見えづらくても、自分から知らせることはあまりありません。そのため発見が難しいといわれています。発見が遅れると視力の成長を妨げるだけではなく、目にも大きな負担がかかります。
子どもの様子を普段から注意して観察し、子どものサインを見逃さないようにしましょう。たとえば、
- 目をこする
- 目を細める
- ものを見るときに顔をしかめる
- よく眩しがる
- 片目をさえぎるのを嫌がる
- テレビや本を異常に近くで見る
- 視線が合わない
- 眼球が不自然に揺れる
- 頭痛や目の痛みが頻繁に起こる
- 片方だけの視力が異常に悪い
などが目がよく見えていないサインの可能性として挙げられます。
子どもに気になる様子があれば、放置せずに眼科を受診しましょう。視力の発達時期は限られているため、早期に発見・治療することが大切です。
子どもの目の病気は眼科に相談しよう
子どもの目の病気は一般的に
- 屈折異常
- 弱視
- 斜視
などが挙げられます。屈折異常は網膜にピントがしっかり合わない状態のことで、近視や遠視、乱視があります。屈折異常は治るものではありませんので、メガネやコンタクトレンズを使用して視力を矯正することが大切です。
片目の視力だけ極端に悪い弱視は、重症でない限り子どもは見にくそうにしません。早期発見し治療ができるように、定期検診を受けることが重要です。小学校以降では手遅れな可能性もあるので、幼稚園や保育園の視力検査で異常があれば、眼科で精密検査を受けるようにしましょう。
眼球の位置が合わない状態の斜視は、手術が必要な場合もあります。また目のアレルギーやドライアイも子どもの目の病気として挙げられます。いずれも眼科を受診して、適切な処置を受けましょう。
「子どもの目を守る」ためのよくある質問(FAQ)
子どもの目を守るためのよくある質問を以下に紹介します。
Q:子どもの近視の主な原因は何ですか?
子どもの近視の原因には
- 遺伝的要因
- 環境要因(暗い照明や眼精疲労を引き起こす作業など)
- 長時間の近距離作業(読書やテレビ鑑賞、デジタルデバイスの使用など)
- 屋外での活動不足
- 不健康な生活習慣
などがあります。
Q:子どもが目の病気になる兆候はありますか?
子どもの目の病気のサインとして、
- 目に痛みやかゆみがある
- 目が充血する
- 視力が急激に悪化する
- 目をよくこする
- ものを見るときに、頭を動かしたり斜めに見たりする
- まぶたが痙攣する
- まばたきが多くなる
- 涙がよく出る
- 目やにが増える
などが挙げられます。これらのサインを見逃さないようにしましょう。
Q:子どもの目の動きに異常を感じたらどうすべきですか?
子どもの目の動きが不自然な場合は、眼科医の診察を受けることが重要です。斜視や他の眼球運動障害の可能性があり、原因によって対処法や治療法は異なります。早期発見・治療ができるように、状態を放置しないようにしましょう。
Q:子どもの目を休めるにはどのような方法がありますか?
子どもの目を休めるためには
- 定期的な休憩をとる
- 20-20-20ルール(20分ごとに20秒間20フィート先を見る)を実行する
- 十分な睡眠を確保する
ことが有効です。
Q: 小学生の目に優しい生活をする方法はありますか?
小学生になると、読書やデジタルデバイスの使用などといった近距離で作業する機会が大幅に増えます。小学生の目に優しい生活をするには、
- 適切な照明
- 適度な休憩
- スクリーンタイムの制限
- 屋外活動の促進
- 栄養バランスの取れた食事
などを意識しましょう。
まとめ|子どもの目に最適な環境を作ろう
子どもの目を守るには、親が目の健康に適した環境を理解し、子どものために対処することが大切です。今後もデジタル化は進み、目の健康への配慮はますます必要になってくるでしょう。この記事で紹介した対処法を実践して、ぜひ子どもの目の健康に優しい生活を送ってください。
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この記事を監修した人
平良 美津子(たいらみつこ)さん
視能訓練士。北九州市出身/大分視能訓練士専門学校卒業。北九州市立若松病院などで勤務後、医療法人大里眼科クリニック(北九州市門司区)勤務、師と仰ぐ辰巳貞子先生のもとで小児眼科を学ぶ。福岡市立こども病院眼科を経て、一般社団法人みるみるプロジェクトを有志らと共に設立。検査/訓練に立ち会った患児はのべ7万人以上。現在複数の眼科クリニックで勤務。制作を手掛けた弱視治療用管理手帳【みるみる手帳】はキッズデザイン賞受賞。後進の視能訓練士育成/異業種交流(弱視就学支援・eスポーツ研究等)/弱視早期発見活動に積極的に関わる。日本視能訓練士協会会員/日本弱視斜視学会会員/一般社団法人みるみるプロジェクト参与/福岡eスポーツリサーチコンソーシアム参画会員。
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