子どもの目の疲れを解消するには?|目を休める3つの方法も解説
子どもの目を休めるには、親や大人が子どもの環境を理解し、目に優しい環境を作ることが大切です。現在の子どもたちの周りには、15年前や20年前には存在しなかったような、目に対して過酷な負担をかけてしまいがちな環境が多くあります。
この記事では、子どもの目の疲れを解消するために必要な知識や対策をご紹介します。目を休める3つの方法や目の健康にいい習慣も解説していますので、ぜひ家庭にとり入れてみてください。
デジタル社会は子どもの目に負担がかかりやすい
デジタル化が急速に進み、子どもの生活環境は大きく変化しています。子どもの目に過酷な負担がかかりやすい環境の増加にともない、親はますます子どもの目の健康状態に気を配る必要があるでしょう。
たとえば子どもの目の疲れを放っておくと、健康だけではなく、集中力が低下し学習効率にも悪影響を与える可能性があります。子どもの目を守るために、親は子どもの目を取り巻く環境について理解しなければなりません。
*参考 眼精疲労と脳疲労
スクリーンタイムの増加で子どもの裸眼視力は低下傾向
「裸眼視力1.0 未満の者」の割合(令和4年度学校保健統計(確定値)より転載)
2022年度の文部科学省による学校保健統計調査では、子どもの裸眼視力1.0未満の割合が発表されています。裸眼視力1.0未満は幼稚園では24.95%、小学校では37.88%、中学校では過去最多の61.23%でした。
子どもの裸眼視力1.0未満の割合は年々増加傾向にあり、この原因のひとつとしてスクリーンタイムの増加が考えられています。文部科学省が打ち出した「GIGAスクール構想」によって、子どもがタブレットなどのデジタルデバイスを使う機会はますます増えていくことでしょう。
子どもの目の健康を守るためには、異常の早期発見・治療が重要です。その他に、日常から眼に過度な負担をかけない環境づくりや習慣化にも配慮する必要があります。
*参考 学校保健統計調査
デジタルデバイスの使用が子どもの目の疲れに影響
スマホやタブレット、パソコンなどの長時間のスクリーンタイムは、眼精疲労のリスクを高めることがわかっています。眼精疲労はやる気や集中力に悪影響を与える可能性があり、自律神経症状を起こすリスクもあります。
また、頭痛や倦怠感、吐き気などの症状が出ることもあり、日常生活に支障をきたすこともあるでしょう。
子どもの目への影響を軽減するためには、適切なスクリーンタイムの管理や定期的な休憩、眼科医への相談が重要です。デジタルデバイスの使用によって慢性的に疲れを感じる場合は、眼科検診を受けて、視力や目の健康状態を確認してもらうようにしましょう。
子どもが近視や眼精疲労などの症状を引き起こす原因
ここでは、子どもが近視や眼精疲労などの症状を引き起こす原因について解説します。子どもが、自分一人で目の健康を守ることは簡単ではありません。子どもの生活環境のどこに目に悪い習慣が存在するのか、親は日ごろから注意を払いましょう。
近視の原因は、遺伝的要因と環境的要因がある
近視の主な原因は、遺伝的要因と環境的要因の両方が関係するといわれています。遺伝的要因で見ると、たとえば親が近視の場合、子どもも近視の確率が高くなると言われています。
近視は遺伝的要素が強いと考えられてきました。しかし、遺伝子研究が進んだ結果、どこまで実際に影響しているのかははっきりしないこともわかってきました。
近視の環境的要因は、目の酷使によるものだけではありません。デジタルデバイスや読書などで行き過ぎた近業や、屋外での活動不足も近視の発症リスクの原因になるといわれています。
その他に、睡眠不足をはじめとする不規則な生活習慣も、目に悪影響を与える可能性があります。
行き過ぎた近業は子どもの目に悪影響を与える
スマホやタブレット、テレビなどを近くで見たり、近い距離で読書や手作業をしたりすることを、近業といいます。デジタル化が進む中で、行き過ぎた近業は子どもの生活のさまざまなシーンで見られます。行き過ぎた近業が子どもの視力に与える影響は大きな問題で、とくにスマホやタブレットなどのデジタルデバイスの使用には注意が必要です。
デジタルデバイスは画面の小さなものが多く、子どもは知らず知らずのうちに「近すぎる距離」で「長時間」見続けてしまいがちです。眼のピントを合わせる距離が近すぎるまま長時間使用すると、目に負担をかけ続けることになります。これにより、近視の発症リスクが高まる恐れがあるのです。
このように行き過ぎた近業は、眼精疲労やドライアイ症状を引き起こす原因にもなります。デジタルデバイスの使用が増える学習環境ではもちろん、ゲームや漫画など遊びの環境でも、近業が行き過ぎていないか注意を払いましょう。
VDT症候群とは
デジタルデバイスやゲーム機の普及によって、さまざまな年齢層に見られるようになった病気に、VDT症候群というものがあります。デジタルデバイスのディスプレイを長時間見ることで起こりえる病気で、子どもも例外ではありません。VDTはビジュアル・ディスプレイ・ターミナルの略で、VDT症候群はIT眼症とも呼ばれています。
症状は眼精疲労やドライアイ、視力低下などの目の症状だけではなく、イライラや不安感などの精神の症状が見られることも特徴です。VDT症候群を予防・緩和するには、
- 適切な距離でディスプレイを見る
- 座り方などの作業環境を見直す
- 定期的に休憩をとる
などの対策をとることがオススメです。
子どもの目を休める3つの方法
子どもの目を休める方法として、以下の3つをご紹介します。
- 20-20-20ルールを実践する
- スクリーンから適切な距離を保つ
- スクリーンタイム後に30分間の休憩をとる
具体的な数字を設定すると、意識づけや習慣化がしやすくなります。ぜひ子どもの目のために、数字を覚えて実践してみてください。
20-20-20ルールを実践する
「20-20-20ルール」とは、米国眼科学会議が推奨している目の疲れを軽減するルールです。20分ごとに20秒間、画面から視線を外して、20フィート(約6m)先を見るようにします。このルールを実践することで、目の筋肉がリラックスして、目を休ませる効果が期待できます。
時間は30分ごとでもかまいませんし、6mの距離にこだわる必要もないので、目の休息を意識しましょう。スマホのタイマーなどをセットすることが習慣化すれば、忘れることなく継続しやすくなります。
スクリーンから適切な距離を保つ
スクリーンから適切な距離を保つことは、目の健康を守り、目の疲れを軽減するために重要です。スクリーンからの近い距離で長時間作業すると、眼のピントを合わせる力を酷使し続けることになります。その結果、目の筋肉が過度に緊張し、目の疲れが生じます。
目の健康を守るためには、スクリーンから適切な距離を保つことが大切です。デジタルデバイスを使用する際は30cm以上、パソコンのディスプレイでは50cmから70cmの距離を保つようにしましょう。スクリーンからの適切な距離は一定ではなく、画面のサイズや解像度などによって変わります。
また適切な距離をとると、視野が広がり画面全体を見ることが可能です。画面全体の情報が視野に入るので、情報を整理しやすくなり、集中力維持の効果も期待できるでしょう。
スクリーンタイム後に30分間の休憩をとる
連続してスクリーンを見続けずに、定期的に休憩を入れることは、目の健康を守るのに重要な要素です。「20-20-20ルール」の他に、30分ルールを設けることもオススメです。
30分ごとに休憩をとり、少なくとも5分間は目を休めましょう。目を休めることは
- 目の疲れの軽減
- ドライアイの予防
の効果が期待できます。
長時間のスクリーン作業は、眼球やその周辺の筋肉を疲れさせる恐れがあります。しっかりと休憩をとることで、これらの筋肉がリラックスし、目の疲れを軽減させるよう意識づけるのです。
また、スクリーン作業はまばたきを減少させるため、ドライアイのリスクが高まります。休憩をとったり、意識的にまばたきを増やしたりして、ドライアイを予防しましょう。
“屋外活動”と”良質な睡眠”が子どもの目には重要
子どもの目を休めたり目の健康を維持したりするには、デジタルデバイスの使用などを意識するだけでは十分といえません。目との関わりを感じにくい屋外活動や睡眠も、子どもの目を守るために重要です。
“屋外活動”が子どもの目に良い?!
屋外活動を通して子どもの目を自然光にさらすことは、近視のリスクを減らす効果があるといわれています。屋外活動が長い子どもは近視の発症リスクが抑制されるという結果を、オーストラリア・アメリカ・イギリス・台湾・中国など世界中の研究機関が報告しています。屋外活動の目安は、1日約2時間以上です。
また屋外活動は一般的に遠くの景色を見るので、行き過ぎた近業から解放される時間となり、目の筋肉をリラックスさせる効果があります。適度な運動も、子どもの目に好影響を与えます。運動は体全体の健康だけではなく、間接的に目の健康にも効果的なのです。
*参考 Outdoor Activity Reduces the Prevalence of Myopia in Children
“良質な睡眠”で子どもの目を休めよう
質の高い睡眠をとることは、子どもの目を休めたり、目の健康を維持したりするために重要です。睡眠中は目の休息をとっており、睡眠と目の疲れは密接に関係しています。
睡眠不足は眼精疲労を悪化させる要因にもなりますので、たとえ目が疲れていなくても十分な睡眠を心がけましょう。
良質な睡眠をとるためには、デジタルデバイスの使用を管理することが重要です。寝る1時間から2時間前にデジタルデバイスを使用する代わりに、ストレッチや音楽鑑賞などでリラックスすると睡眠環境が整いやすくなります。寝る前に大量の情報を脳に送ると眠りにくくなるため、心身ともにリラックスした状態を心がけてください。
また睡眠の質は、日中の活動にも関係しています。適度な運動と規則正しい生活を意識して、日々を過ごしましょう。
子どもの目のために親ができること
子どもの目のために親ができることを、以下の2つに分けてご紹介します。
- 子どもの目の異常に気づけるようにする
- 子どもの目を守る環境づくりをする
ぜひ日常生活にとり入れて、子どもの目の健康に役立ててください。
子どもの目の異常に気づけるようにしよう
子どもは視力が低下したとしても、なかなか自分から知らせることはありません。親や大人が子どもの細かい動きに注意し、子どものサインに気づけるようにしましょう。
目に異常がある時に、子どもは
- 物を見るのに頭を傾けたり、目を細めたりする
- 物を見るときに目をこする
- テレビやコンピューター画面から離れない
- 片目を閉じて見ることが多い
- 光を眩しそうにしている
- 目が充血している
- 頭痛や吐き気がする
などのサインを出します。これらは視力低下のサインかもしれませんが、他の問題を抱えている可能性もあります。
これらのサインが見られたら、すみやかに眼科医などの専門家に相談するようにしましょう。子どもの目の異常は、早期に発見し治療することが重要です。個人で判断せず専門家に診てもらい、定期的な眼科検診をオススメします。
眼科検診と6つのポイントで子どもの近視予防
子どもの近視の進行を遅らせるなど、目の健康を守るためには、定期的な眼科検診と目に健康的な生活習慣を意識することが大切です。眼科検診で早期に症状を発見できれば、適切に処置できる可能性が高くなります。
目に健康的な生活習慣としては、具体的には、
- 屋外活動の時間を増やす
- 遠くを見る習慣をつける
- 照明の明るさを適切にする
- 正しい姿勢をとる
- 長時間のスクリーン作業を避け、定期的に目の休憩をとる
- 良質な睡眠と規則正しい生活を送る
の6つのポイントが挙げられます。子どもの環境を確認し、それぞれ適切に対応しましょう。
視力低下の予防には『アイケアークリップ』もおすすめです。メガネに装着するだけで、姿勢の悪さや部屋の明るさなど視力低下の要因になるものに振動で警告します。目に優しい生活習慣を身につけましょう!
「子どもの目を休める方法」に関するよくある質問(FAQ)
「子どもの目を休める方法」に関するよくある質問を3つご紹介します。
子どもの視力を戻す方法はありますか?
一度低下した視力は基本的には回復しませんので、視力の維持を心がけてください。視力の維持には、
- 定期的に眼科検診を受ける
- 照明や座り方を適切にする
- 積極的に屋外活動をする
- 栄養バランスのとれた食事をする
- デジタルデバイスの使用に注意する
などが有効です。
自宅でできる子どもの視力回復エクササイズはありますか?
弱視治療などをのぞき、近視などで裸眼視力が低下した場合、これを「回復」する方法はありません。ですが、目のピント調節力や目の周りの筋肉をほぐすエクササイズはあります。
目の健康にいいとされるエクササイズとして以下の3つをご紹介します。子どもの目をリラックスさせるのに役立ててください。
- 焦点調節のエクササイズ:視線を遠くのものに合わせ、それから近くのものに移すことを繰り返します。
- 眼球を動かす:円を描くように両方の目をゆっくりと回したり、左右上下に両方の目の視線を動かしたりします。
- まばたきをする:まばたきの数を意識的に増やすことで、目が潤い、眼球のマッサージ効果も期待できます。
子どもの眼精疲労の症状は何ですか?
子どもの眼精疲労の症状は、目と体に現れます。目の症状としては
- 目が疲れる
- 視界がぼやける、かすむ
- 目が痛い
- 目が充血している
- 目がショボショボする
- 過度に眩しがる
- 涙が多く出る
などが挙げられ、体の症状としては
- 肩こり
- 倦怠感
- 頭痛
- めまい
- 吐き気
などが挙げられます。気になる症状が見られたら、自分自身で判断せずに、眼科医などの専門家に相談しましょう。
まとめ|子どもの目を休める環境を作ろう
この記事では、子どもの目の疲れを解消するために必要な知識や対策をご紹介してきました。
子どもの目を休める環境は、自分たちで作ることが可能です。対策方法はいずれも家庭で実践できるものばかりなので、ぜひ日常生活にとり入れてみてください。
そして、もし子どもの目に異常を感じたら、はやめに眼科医などの専門家に相談しましょう。子どもの目の健康を維持するには、早期の発見・治療が大切です。
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この記事を監修した人
平良 美津子(たいらみつこ)さん
視能訓練士。北九州市出身/大分視能訓練士専門学校卒業。北九州市立若松病院などで勤務後、医療法人大里眼科クリニック(北九州市門司区)勤務、師と仰ぐ辰巳貞子先生のもとで小児眼科を学ぶ。福岡市立こども病院眼科を経て、一般社団法人みるみるプロジェクトを有志らと共に設立。検査/訓練に立ち会った患児はのべ7万人以上。現在複数の眼科クリニックで勤務。制作を手掛けた弱視治療用管理手帳【みるみる手帳】はキッズデザイン賞受賞。後進の視能訓練士育成/異業種交流(弱視就学支援・eスポーツ研究等)/弱視早期発見活動に積極的に関わる。日本視能訓練士協会会員/日本弱視斜視学会会員/一般社団法人みるみるプロジェクト参与/福岡eスポーツリサーチコンソーシアム参画会員。
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