子供の近視が増加!現代のライフスタイルが与えるひどい影響と対処法

子供の近視が増加!現代のライフスタイルが与えるひどい影響と対処法

最近、「子供の視力が心配です…」という親御さんの悩みをよく耳にします。デジタルデバイスの普及と屋内活動の増加により、子供たちの目の健康が親にとって大きな懸念事項となっています。

皆さんのお子さんも、長時間のスマホやタブレットの使用、学校の勉強や読書で目を酷使しているのではないでしょうか。

本記事では、

  • 近視の原因や近視進行のリスク
  • 視力低下のサイン
  • 子供の近視を矯正する方法
  • 近視を予防する日常のケア

など、子供の目の悩みに関する情報をご紹介します。この記事を通して、お子さんの目の健康を守るための一助となれば幸いです。

子供の近視の原因と予防法

子供はどのような原因で近視になってしまうのか、親としては気になるところです。この章では、子供が近視になる原因や習慣、予防法について詳しく解説していきます。

近視の原因

近視とは、近くを見るときにははっきりと見えるが、遠くを見るとぼやけて見える状態です。子供は生まれてから、目の発達・成長が続きます。目が発達するにつれて、目のピントが合わなくなる「屈折異常」という状態になってしまう子供もいて、この屈折異常の一つが近視なのです。

近視がいつ発症してどの程度の度数に進んでいくかは人それぞれです。なかには5㎝先にピントが合うというようなとても強い近視も存在します。

それを決めると思われる要因は「遺伝的な要因」と「環境的な要因」の2つがあり、複雑に組み合わさっていると考えられています。

近年注目されているのは、「環境的な要因」が大きいことがわかってきたという点です。環境的な要因とは、生活習慣や眼の使い方などを指し、この影響が想像以上に大きいのではないかと指摘されています。

学校でもICT教育が進み、タブレットやパソコンなどのデジタル機器が身近なものとなってきている中、タブレットやパソコンなどのデジタル機器の画面を見たり、読書をしたりするような、近くのものを見続ける行動が、近視が進行する大きな原因です。

インドの子供を対象とした論文で、ビデオゲームを週4時間以上する子供は、しない子供に比べて近視になるリスクが8.1倍にもなるというデータもでています。これは、ビデオゲームに集中するあまり、画面を見続けてしまうこともそうですが、子供の屋内での活動時間が増えていることも影響していると考えられています。

*参考 子どもの近視。最初に理解したいコト‐視能訓練士平良のみるみる日記

*参考 Prevalence of Myopia and Its Risk Factors in Urban School Children in Delhi: The North India Myopia Study (NIM Study) - PMC

目の健康と太陽光の関係とは

太陽光が子供の近視を防ぐ助けになることが分かっています。オーストラリア国立大学の研究チームは、太陽の光が「ドーパミン」という重要な脳内物質の放出を促進することを発見しました。ドーパミンは、近視を予防する役割を持っているのです。

実際に、外で遊ぶことは子供の目にとって非常に良い効果があります。とくに、太陽の光を1日に2時間以上浴びることが推奨されているのです。屋外での遊びや活動は、近視になる危険性を減らすだけでなく、全体的な目の健康にも良い影響を与えます。

さらに、太陽の光は体の古い細胞が新しい細胞に置き換わる「新陳代謝」を活発にし、免疫力を高める効果もあります。子供たちが外で活動することは、目の健康をはじめとして全身の健康にも良い影響をもたらすのです。

子供たちに十分な太陽光を浴びさせるために、屋外での活動時間を積極的に取り入れましょう。公園での遊び、散歩、スポーツなど、楽しみながら健康を支える活動を一緒に楽しむのがオススメです。

*参考 【眼科医監修】子どもの近視は治る?近視の原因から予防までを解説 | JINS - 眼鏡(メガネ・めがね)

外遊びで近視を予防しよう

屋外での遊びやスポーツは、子供の目の健康や発育にとって非常に大切です。前述したように、屋外で活動する時間が多い子供は、近視になるリスクが低いことが研究で明らかになっています。

ビデオゲームなどの屋内活動を週に4時間以上する子供の場合、近視になるリスクは非常に高く、ビデオゲームをしない子供に比べて8.1倍も高くなると報告されています。一方で、週に14時間以上外で遊ぶ子供は、14時間未満の子供に比べて近視のリスクが0.2倍に減少するという結果も出ています。

屋外での活動が目の焦点を調節する能力を向上させ、眼球の成長を正常に保つ助けになるからです。日光にさらされることは、近視を予防するのに効果的な手段とされています。

子供たちが健康な目を育てるためには、屋外での活動を日々の生活に取り入れることが重要です。公園での遊び、自然の中での探索、スポーツなどを通じて、楽しみながら近視のリスクを低減しましょう。

以上のように、子供の近視の主な原因となる習慣がいくつかあります。しっかりと原因を理解し、適切な習慣や予防法を取り入れ、子供の目を守ってあげましょう。

*参考 【眼科医監修】子どもの近視が進む原因は? 眼科医がおすすめする予防対策や受診のタイミング | JINS - 眼鏡(メガネ・めがね)

子供の近視進行の危険性

子供の近視が進んでいくとどのような危険性があるのか。近視の度数が強くなる危険性と、緑内障や網膜剥離(もうまくはくり)といった症状のリスクなどを解説します。また、近視の進行を防ぐため、近視のサインや予防法も合わせてご紹介します。

強度近視の危険性

強度近視とは、通常の近視よりもさらにぼやけて見える症状です。強度近視は、目に様々な問題を引き起こし、重い目の病気になるリスクが高まる可能性があります。

強度近視になると、眼球が変形しやすくなり、目の奥で光を感じる部分と、血管が集まる部分、目の外側を保護する層など、目のさまざまな部分に障害が生じやすくなります。障害が生じると、将来的にさらに視力が低下するリスクを高めるため、注意が必要です。

また、目への圧力にも気をつけることが大切です。目をこする、強くつぶるなどの行動は、小さな圧力でも目の奥が出血する「眼底出血」を引き起こす可能性があるため避けるべきです。些細な行動に思われますが、強度近視の人にとってリスクが高い行動です。

強度近視の進行を抑えるためには、定期的な眼科検診を受けることが大切です。眼科の専門医は、目の状態をチェックし、適切な視力矯正を行うことで、目の長さの過度な伸びを防ぎ、将来的な視力障害のリスクを減らします。

子供の目の健康を守るためには、こうした情報を理解し、適切なケアを行うことが大切です。視力の変化に気づいたら、早めに眼科医の診察を受けることをオススメします。

*参考 子どもの近視を予防。さまざまな検査でチェックして進行を抑える | メディカルドック

緑内障や網膜剥離のリスク

近視が進行すると、緑内障や網膜剥離のような重い目の病気になるリスクが高まります。緑内障や網膜剥離は、視力の低下や、最悪の場合失明にもつながるため注意が必要です。

緑内障は、視神経が障害を受ける病気で、視力の低下を引き起こします。網膜剥離は、目の奥の網膜が薄くなり、剥がれることによって生じます。軽度の近視でも、緑内障のリスクは4倍、網膜剥離は3倍になるとされているため、注意が必要です。とくに、強度近視の場合は、緑内障が14倍、網膜剥離が22倍のリスクに高まってしまいます。

リスクを減らすために、子供が屋外で遊ぶ時間を増やすことが推奨されています。近視がある子供もない子供も、1日に2時間は屋外で過ごすことが良いとされています。

もし、子供が目に関して何か気になっているようであれば、すぐに眼科医に相談しましょう。早期発見と適切な治療が、重い病気を防ぐ鍵です。

*参考 気をつけよう!子どもの近視 | 目についての健康情報

*参考 強度近視の方は緑内障に注意しましょう | 西宮市・今津駅の和田眼科

*参考 網膜剥離|近視から派生する目の疾患を知る

視力低下のサインと対処法

子供の視力低下を疑うべきサインは、日常生活のさまざまな場面に隠れています。たとえば、以下のような点が考えられます。

  • 見る物に近づこうとする
  • 目を細めて見ている
  • まばたきをよくする
  • 頻繁に目をこする

これらは、見えにくいものをなんとか見ようとするためにあらわれやすい仕草です。目が悪いと断定できるサインではありませんが、視力の低下を疑うことが、近視の早期発見につながりますので、早めに眼科を受診しましょう。

近視の進行を予防するための方法を日常に取り入れることも非常に大切です。物を見る時は30センチ以上離して見ることや、近くの物を見続けた後は目を休ませること、暗い場所での読書やスマートフォン、ダブレットなどの操作は避け十分な明るさで行うことなど、目に負担をかけない習慣や屋外で遊ぶ時間を定期的に設けるなどの決まりを作ることも心がけましょう。

*参考 【視力低下4つのサイン】眼科医監修~子どもの視力の守り方~

*参考 気をつけよう!子どもの近視 | 目についての健康情報

子供の近視治療の方法

子供の近視を治療したい場合はどのような方法があるのでしょうか。「紫外線治療」や「近視矯正手術(レーシック)」の内容、安全性の高い新しい治療法として注目されている「レッドライト治療法」について詳しく説明していきます。


紫外線治療は近視抑制に対して効果はある?

子供の近視治療において、紫外線(UV)を利用した治療法についての情報は、現在まだ十分ではありません。そのため、紫外線治療が近視の抑制にどの程度効果があるかについては、はっきりとした結論を出すことは難しい状況です。

しかし、太陽光の下で遊ぶことが近視の予防に効果があるとわかっていることから、子供たちの目の健康に良い影響を与える可能性は捨てきれません。屋外での遊びや活動を通じて自然に紫外線を浴びることが、近視の進行を抑えるのに役立つかもしれません。ただし、紫外線を長時間浴びすぎると、目や肌に害を及ぼす可能性があるため、適切な時間での露出と、紫外線からの保護が重要です。

さらなる研究が必要とされている紫外線治療ですが、将来的にはこの分野における調査や研究によって、より多くの情報が得られることが期待されています。

近視の治療における紫外線の利用に関心がある場合は、最新の情報を得るために定期的に眼科専門医の診察を受けることがお勧めです。専門医は、現在の研究や治療法についての情報を提供し、子供の目の健康を守るためのアドバイスを行います。

*参考 近視の発症を予防し、 進行を防ぐための各国の取り組み

近視矯正手術の内容

近視矯正手術の中で最もよく知られているのが、レーシック手術です。

この手術では、特殊なレーザーを使って目の表面の一部である角膜の形を変え、視力を良くすることが目的です。眼鏡やコンタクトレンズの代わりとして行われることが多く、光が目に入る際の屈折(曲がり方)を調整して視力を改善します。

しかし、レーシックは近視の根本原因を治すわけではありません。近視の主な原因は、眼球の長さが通常よりも長くなることですが、レーシックではこの眼球の長さを短くすることはできません。そのため、手術後にも眼球が伸び続けると、再び視力が低下する可能性があります。

また、近視が進行するリスクが高いケースもあります。とくに、もともと強度近視や物が歪んで見える状態の乱視がある人には注意が必要です。

レーシック手術は、近視の進行を止めるためではなく、現在の視力を改善する目的で行われます。このため、手術の適用には、患者の年齢や目の状態を考慮して、専門医の慎重な判断が必要です。

手術を検討している場合は、専門医との相談を通じて、個々の目の状態に合った治療計画を立てることが重要です。また、子供世代にレーシック手術をすることはまずありません。多くは20代~30代の施術が多いです。

近視矯正手術は大きな決断ですので、手術のメリットとリスクをよく理解し、専門医と十分に話し合った上で決定することが望ましいでしょう。

*参考 レーシックのメリットとデメリット|手術の特徴を解説 | 先進会眼科

*参考 レーシック後の視力低下の可能性 | 先進会眼科

近視進行抑制治療の新技術とは?

比較的新しい近視進行を抑える治療法の中で、レッドライト治療法が注目されています。レッドライト治療法は、2024年1月現在、医療機器として未承認であり、完全自由診療となります。実施している眼科医療機関もまだ少ない状況ですが、安全に近視の進行を抑える効果が期待されており、とくに強度近視の治療に有効であることが注目されています。

レッドライト治療法は、650nm(ナノメートル)の赤色光を使って、近視の原因である眼球の長さが通常以上に伸びるのを抑える技術です。2014年に中国で開発され、近年アメリカ眼科学会雑誌でその効果が発表されるなど、国際的にも関心が高まっています。

治療自体は非常に簡単で、専用の機器から発せられる赤色光を毎日2回、1回3分間見るだけで、その治療を週に5日行います。レッドライト治療法の安全性は高く、現在のところ重大な副作用の報告はありません。ただし、治療中に一時的な眩しさや残像が感じられることがありますが、3分ほど目を閉じることで解消されるとされています。もしも治療中に強い副作用を感じた場合はすぐに医師に相談し、必要に応じて治療を中止する必要があるでしょう。

レッドライト治療法は3歳以上の子供から適用可能ですが、片方の目が違うところを向く「斜視」や通常よりも大きい瞳孔の「瞳孔散大」がある子供には適用できない場合があります。適用条件や費用、安全性については、しっかりと理解し、専門医と相談することが大切です。

*参考 レッドライト療法|治療と手術

日常生活での目のケア

生活する中で子供の目をケアする方法はどのようなことがあるのでしょうか。日常でしてしまいがちな仕草の危険性から、アレルギーによるリスクも含め、対処法や日常でできるケアの方法をご紹介していきます。

目を休める日常的な習慣

子供の目の健康を守るためには、日常的に目を休めることがとても重要です。スマートフォンやタブレットなどの画面を長時間見たり、本を長時間読んだりすると、目の焦点を合わせるための筋肉が緊張し、疲れてしまいます。

この疲れが続くと、目の筋肉が緊張した状態が続き、近視の原因になることがあります。長期的に続くと、さらに視力が低下する原因にもなり得ます。しかし、適切に休息を取ることで、この筋肉の緊張を和らげることができます。

子供の目を休めるための日常的な習慣として、以下の4つが大切です。

  1. 外遊びを促す:屋外での活動は近視リスクを低減し、自然な光の中で目を休めるのに役立ちます。理想的には1日2時間以上の屋外活動が推奨されます。
  2. 近くを見る作業の休憩:スクリーン作業や読書の際は、1時間ごとに5〜10分の休憩をとり、目を休めるようにしましょう。
  3. 正しい姿勢を習慣づける:スマホや読書時は、目との適切な距離を保ち、正しい姿勢を維持することが重要です。
  4. 明るい環境での作業:暗い部屋でのスクリーン作業や読書は避け、明るい環境で目に負担をかけないようにしましょう。

これらの習慣を身につけることで、子供の視力のケアに役立ちます。簡単にできるものばかりですので、ぜひ実践してみてください。

*参考 小児近視抑制 | 今井眼科医院

子どもの視力低下予防には「アイケアークリップ」の装着もおすすめです。視力に悪い影響を及ぼす姿勢や部屋の暗さを察知して警告をしてくれるアイテムです。視力低下を促す生活習慣を見直す手助けとなるでしょう。

「子供の近視」に関するよくある質問(FAQ)

最後に、子供の近視に関するよくある質問をいくつかピックアップし、お答えしていきます。よくある質問として、子供の失明に関する不安や、近視は治るのかどうか、いつから眼鏡をかけさせるべきかなどが挙げられます。

子供の近視はひどい場合失明につながる可能性がありますか?

強度近視、とくに「病的近視」と呼ばれる重い状態では、失明のリスクが高まります。強度近視では、眼球の形が変わり、網膜(目の奥で光を感じる部分)や視神経に障害が生じることがあります。

これにより、網膜剥離や網膜の一部に小さな穴が開く状態、黄斑円孔などのリスクが高まり、最悪の場合、失明することもあります。早期に適切な治療を受けることが重要です。

子供の近視は治りますか?

近視は一度発症すると進行し続け、元に戻ることはほぼありません。ただし、近視の進行を遅らせることは可能ですので、日常で目のケアを意識した習慣や、眼科の検診と適切な処置が推奨されます。

子供にいつから眼鏡をかけさせるべきですか?

視力が落ちはじめたと感じたタイミングで、適切な矯正の眼鏡をかけることが推奨されます。眼科ではとくに「小学校入学」を一つの目安として、近視の子どもに眼鏡装用を推奨することが多いです。良好な学習環境を整える意味でも、就学後の眼鏡装用は大切です。また、適切な眼鏡装用がさらなる近視進行をある程度抑えるという意見もあります。

子供の眼鏡度数は短期間に変化することも多々あり、6か月~1年に1回程度の眼科受診によるチェックと、メガネ店でのフィッティング調整(数か月に1回)を心がけるようにしましょう。

子供の近視回復トレーニングは効果ありますか?

近視の回復に対して、特定のトレーニングが効果的であるという明確な根拠はありません。しかし、屋外での活動を増やすことで近視の進行を抑制し、近視予防に効果的であることがわかっています。平均2時間程度の屋外活動を心がけましょう。

子供の近視治療にはどのような方法がありますか?

近視治療としてすぐに取り組める方法としては、まず屋外での活動時間を増やしましょう。1日2時間程度の外遊びが効果的です。

また、近視になった時には適切な矯正がされた眼鏡を使用し、見えにくい状態を続けないようにもしましょう。そのためには、定期的な眼科受診をオススメします。

まとめ|子供の近視がひどくならないように予防を!

子供の近視は、タブレットやスマホを使用する時間の増加や、屋内での活動が多い生活に大きく関連していることをご理解いただけたでしょうか。近視の予防法として日常生活で太陽光を浴びる時間を増やし、屋外での活動を促進すること、さらにタブレットやスマホを見続けた後や読書後は、目を休めることが大切です。

また、子供の目に少しでも異常を感じた場合は、早めに眼科医や専門家に相談することも大切です。子供の目がひどくなる前に、定期的な検診を受け、異常の早期発見・治療に取り組みましょう。 

この記事を監修した人

松井萌珠さん

看護師・視能訓練士(広石眼科医院) / 北九州市出身 2008年看護師免許取得

病院勤務を経て医療法人広石眼科医院入職(現職)。眼科検査の重要性を痛感,勤務しながら九州保健福祉大学で学び2021年視能訓練士免許取得。小児眼科を辰巳貞子先生(小児眼科医)平良美津子先生(視能訓練士)に師事。眼科勤務に邁進しつつ、みるみるプロジェクトアンバサダーとして子どもの眼の啓発活動にも取り組む。

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