【学校健診~視力検査結果ABCDの意味とは?】現役視能訓練士が解説
小学校・中学校に通うお子さんが、学校健診で「眼科受診を推奨する」旨の視力検査結果プリントをもらってくることがあると思います。
そこに記載されている「ABCD」とはどういう意味でしょうか?この結果の意味や眼科受診がなぜ必要なのかなどについて解説します。
学校健診とは
学校健診とはその名の通り、学校で実施が義務付けられている健康診断を指します。
学校保健安全法(昭和33年)および実施規則に基づき、毎学年4月~6月末までに実施されています。
(注意)学校によっては時期が異なることもあります
学校保健安全法第13条第一項「学校においては、毎学年定期に、児童生徒等(通信による教育を受ける学生を除く。)の健康診断を行わなければならない。」
学校保健安全法実施規則第5条「法第十三条第一項の健康診断は、毎学年、六月三十日までに行うものとする。ただし、疾病その他やむを得ない事由によつて当該期日に健康診断を受けることのできなかつた者に対しては、その事由のなくなつた後すみやかに健康診断を行うものとする。」
身長体重や栄養状態のほか、脊柱・胸郭の疾病・異常の有無、視力・聴力、眼の疾病・異常の有無、耳鼻咽頭疾患・皮膚疾患の有無、歯・口腔疾病・異常の有無、その他の疾病・異常の有無などが検査項目となっています。
皆さんの多くはこのときの経験が、「視力検査といったらアレだよね!」というイメージになっているのではないでしょうか。
学校の視力検査370方式とは
学校健診における視力検査は、養護教諭や他の学校関係者によって行われます。学校保健としてのスクリーニング的検査であることから、合理的で効率的な視力測定法として、教室 での見え方を基準にした 370 方式視力測定法が広く採用されています。
視力0.3、0.7、1.0で見え方を区分することから、370 (サンナナマル) 方式と呼ばれています。
ここで注意しなければならない点は、学校健診の視力検査は学校生活に支障のない見え方であるかどうかを検査しているのであって、精密な視力検査が目的ではないという点です。
結果の評価ABCDとは
上記の図のとおり
- 「A」:遠方視力1.0以上
- 「B」:0.7~0.9
- 「C」:0.3~0.6
- 「D」:0.2以下
と区分されています。
平成4年に学校保健安全法施行規則が改正され、それまで細かく視力として表現されていたもの(例えば0.3、0.8など)が、この改正以降は370方式によるABCDの4区分で判定/通知されることになりました。
それ以前に学校健診を経験した世代の方が、「あれ?視力の数字ではないの?」と驚かれるのはこうした理由です。
眼科受診が「B以下」の理由
それでは、ABCDのどれになったら、眼科受診が必要でしょうか。
視力0.7以上あれば、教室の後ろの方からでも黒板が見えるとされていることから、CかDで眼科受診しようと思われる保護者様も多いのですが、実際はA以外の全て、B以下になったら眼科受診を強くお薦めします。
視能訓練士としてお薦めする理由は以下のとおりです。
☑Bはその多くが近視が始まった頃である可能性が高い
→短かい期間で近視が進む可能性がある。
初期の段階で精密な検査をしておきたい
☑実際に良好な学習環境は視力0.9~1.0が望ましい
・学年が上がるにつれどんどん学習内容は高度化します。
漢字は複雑化し、算数(数学)の記号も高度化して、文字の大きさは小さくなります。
学校では0.9~1.0の視力が望ましいとする研究もあります。
教室における黒板の文字の見え方の検討― 視力が 0.7 以上あると黒板の文字が見えるのか ―上原 知子, 高橋 清子, 氏間 和仁 日本視能訓練士協会誌2016 年 45 巻 p. 323-329
実際、多くの眼科医は1.0近くの視力が確保できるような眼鏡処方を行っています。
※↓ ↓ 学校教育で必要な視力は?という記事もご参照ください ↓ ↓
(関連記事)姿勢と眼鏡と学力は関係ある⁉【現役視能訓練士が解説】
【注意】学校健診の信頼性
学校健診はあくまでスクリーニング検査。
絶対的に信頼できる結果ではないことにご注意ください。
たとえば、学校健診の結果が「A」なのに、眼科で視力検査したら裸眼視力0.7以下だった…なんてケースは珍しくありません。
子どもにはピントを合わせる力(調節力)が豊かに備わっていたり、眼を細めて見たり、ランドルト環の方向を覚えてしまっていたりなどが原因として考えられます。
ですので、学校健診で良好な視力と思っていても本当は皆さんに眼科受診して欲しいなぁというのが、視能訓練士としての率直な想いです。
眼科で行う検査は、裸眼視力(眼鏡装用含む)だけではありません。
▷近見視力検査(遠くだけではなく近くの視力を調べる)、
▷屈折検査(遠視近視乱視などなんらかの屈折異常の有無や程度を調べる)
▷両眼視機能検査(両眼がチームワークよく使えているか)
など様々な検査をしています。
眼のコンディションチェック
眼科で行う精密な検査は、別の言い方をすれば「眼のコンディション」チェックです。
お子様のコンディションが整っているか、例えば歯なら虫歯がないか、体調なら熱がないか、どこか痛くないか気になりますよね?
眼も同じです。お子様本人は見えにくさがあっても自覚がないことが多いため、保護者様が積極的に眼科受診させて「眼のコンディション」を定期的にチェックしてあげることがとても大切なのです。
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この記事を書いた人
平良 美津子(たいらみつこ)さん
視能訓練士。北九州市出身/大分視能訓練士専門学校卒業。北九州市立若松病院などで勤務後、医療法人大里眼科クリニック(北九州市門司区)勤務、師と仰ぐ辰巳貞子先生のもとで小児眼科を学ぶ。福岡市立こども病院眼科を経て、一般社団法人みるみるプロジェクトを有志らと共に設立。検査/訓練に立ち会った患児はのべ7万人以上。現在複数の眼科クリニックで勤務。制作を手掛けた弱視治療用管理手帳【みるみる手帳】はキッズデザイン賞受賞。後進の視能訓練士育成/異業種交流(弱視就学支援・eスポーツ研究等)/弱視早期発見活動に積極的に関わる。日本視能訓練士協会会員/日本弱視斜視学会会員/一般社団法人みるみるプロジェクト参与/福岡eスポーツリサーチコンソーシアム参画会員。
▷みるみるネットにて視能訓練士平良のみるみる日記 好評連載中