子供の弱視とは?|原因や特徴・治療できる確率について解説します!

子供の弱視とは?|原因や特徴・治療できる確率について解説します!

眼球は、生まれた時点でほとんどの構造は完成していますが、機能の面では未完成です。

ものを見て、網膜に鮮明な像が映し出されることで発達します。

何らかの影響で視力の発達がうまくいかず弱視になります。

この記事では、弱視になる原因仕組み、弱視の子供の割合、弱視の治療について紹介します。

 

子供の弱視とは

 

弱視は簡単にいうと、眼鏡等で矯正をしても視力が不良であることを指します。

視力の発達期間に目を正しく使えないことで、視機能が成長していない状態です。

 

子どもが弱視になる原因

視力は成長とともにしだいに発達していきます。視力の発達には、ものを見るという眼への刺激が必要です。何らかの原因で鮮明なものを見ることができない状況におかれると、視力の発達が停止してしまいます。

これが弱視の原因です。

生まれたばかりの新生児は視力がほとんどなく、ものがしっかりと見えていません。子供は8歳頃に大人と同程度の視力に成長するものです。子供の視力が成長する期間のことを「視覚感受性期間」と呼び、期間内に正しく目を使って視機能を向上させます。

感受性期は1歳半頃でピークを迎え、8歳頃まで続くといわれています。

この感受性期間に斜視や遠視などの正しく見えない条件があると、視機能の成長が妨げられてしまいます。

▷参考リンク みるみるネット/子どもの眼について

 

弱視の種類

子供の弱視は大きく分けて4種類に分類されます。

 

  • 屈折異常弱視/両眼とも屈折異常が強く、矯正されなかった場合に、その眼が十分使われず弱視になったもの1)。遠視や乱視が原因となる弱視が多く、自分の力ではピントを合わせられないため、鮮明な像を見ることができません。そのため、視機能の成長が妨げられてしまいます。
  • 不同視弱視/屈折異常の程度が両眼で顕著に差があったときに、屈折異常の強い方の眼が使われず弱視になったもの1)。良く見える方の眼だけを使ってしまい、屈折異常が強い方の目は視機能の成長が妨げられてしまいます。
  • 斜視弱視/先天性に斜視があると、斜視になっている眼が使われない。そのために弱視になったもの1)。内斜視に多く、斜視となって視線が合わない方の目は視機能の成長が妨げられます。
  • 形態覚遮断弱視/先天眼瞼下垂や先天白内障などのために、その眼が使われず、弱視になったもの1)。視力の発達期間に眼を眼帯などで一定期間以上持続して隠すことも要因となります。

 1)所敬.現代の眼科学.改訂第11,金原出版,2012,353

 

 

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弱視の子どもの割合

子どもの弱視の割合は50人に1人とされています。2021年度の年間出生数が811,604人でしたので、年間で16,000人ほどの子供が弱視である計算です。

50人に1人の確率となると、想像していたより多く感じる人もいるでしょう。

子どもの弱視は、珍しい病気ではありません。

 

子供の弱視は治るのか

弱視の治療は開始する時期が早いほど効果が得られやすいため、早期発見・早期治療が重要です。感受性期間に適切な視覚刺激を与えることで、視力を発達させます。

残念ながら、治療を行うと必ず視力1.0を獲得できる!というわけではありません。少しでも良好な視力を獲得できるように、早期に治療を開始することが何よりも大切です。

 

先ほども説明したとおり、子どもの視機能は徐々に成長していきます。そのため、物をはっきりと捉えられていなくても、その子は自分の見え方しか知らないので不便に感じません。見えていたのが見えなくなることとは違うので、本人も見えづらいことに気づくことが難しいのです。

また、片眼だけ弱視となっている子どもは、片眼はしっかりと見えているため、生活に支障を来さず見えにくい素振りも見せません。そのため、自宅で発覚することは難しく、ほとんどの場合は病院で健診しなければ発覚が遅れます

 

3歳児健診でも70%以上が弱視を発見できません。

実は3歳児健診の一次検査は、約93%の自治体がご家庭での視力検査をお任せしています。眼科医に健診を依頼する割合は4.8%と、非常に少ないです。

検査で要精密検査となった場合でも、35%の方が眼科医を受診していないという報告もあります。

子どもの弱視は早期治療が重要であるにもかかわらず、多くの方が眼科医を受診していないため、弱視の発覚が遅くなっています。

子どもの弱視は早期発見・早期治療が大切なので、早めに眼科医を受診しましょう。

  

子どもの弱視の治療法

子どもの弱視がわかった場合、とにかく早期にきれいな像を見せる必要があるため、眼の度数の検査をして屈折異常を正確に把握し、その子の眼に合った眼鏡(治療用眼鏡)の装用を開始します。

必要に応じて、眼帯(アイパッチ)や目薬を使用して視力の良い眼を隠し、弱視になっている眼を多く使う訓練を行います。弱視の訓練には近くのものを見ることが視力の成長を促す刺激となるので、塗り絵や字なぞりといった手を使った作業を訓練に取り入れます。

大切なことは弱視を早期発見して、感受性期間内に治療していくこと。

子どもの視力が不良とわかった場合、眼科医を受診して適切な治療を行いましょう。

  

まとめ|子供の弱視は早期発見が大切

子供は視力が未熟な状態で生まれます。8歳頃までの感受性時期を経て、大人と同程度の視力へ成長していくものです。

しかし、生まれたばかりの頃はほとんど見えていない新生児期から、徐々に視力が成長するため、子供が弱視になっても気付かないケースが多くなります。

子供の弱視は、早期発見して治療すれば95%の確率で完治可能です。50人に1人の確率で子供が弱視になることをふまえて、3歳児健診を目処に眼科医の受診を検討しましょう。

早めに治療するほど、感受性時期にあわせて視力を矯正していけます。子供の弱視は早期発見が大切なことを理解して、定期的な健診を行いましょう。

 

【実際の臨床現場では】

子どもの弱視の早期発見/早期治療は、社会皆さんの協力と連携が大切といわれています。保護者だけではなく、幼稚園保育園学校の先生方、眼科医や視能訓練士、眼鏡店など関係者皆さんの協力が不可欠です。

視能訓練士という国家資格の重要な役割の一つは、子どもの弱視に対する検査や訓練です。子どもの検査は大人以上に高い検査技量が求められることも多々あるため、全国でたくさんの視能訓練士が技術と知識の研鑽に励んでいます。

▷参考ページ 子どものみる力を守り育てるみるみるネット

 

<参考記事>

厚生労働省|令和3年(2021) 人口動態統計月報年計

 

この記事を監修した人

岸川亜洲香(きしかわあすか)視能訓練士

熊本県出身 福岡国際医療福祉学院(現:福岡国際医療福祉大学)卒業

卒後、福岡市立こども病院眼科に入職。尊敬する視能訓練士平良さんから小児眼科を学ぶ。その後眼科クリニックにて小児眼科の経験を積み、出産を機に退職。母親として子育てと仕事を両立し、患者さんや親御さんに寄り添える視能訓練士を目指す。

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