正しい姿勢で近視を防ぐ|子供の視力を守るポイントとは
近視であることで眼科医を目指すことに
佐久間 浩史先生は平成18年に神奈川県横浜市で「戸塚ヒロ眼科」を開設後、丁寧かつ最先端の診療を提供し、地域医療に貢献されているベテランのドクターです。大学病院では長く勤務医としての経験を重ね、白内障手術などさまざまな症状を手がけました。地域の方に向けた勉強会も定期的に開催するなど、地域に密着した「心の触れ合い」を大切にする診療を実践されています。
小児眼科、子供の近視、子供の斜視弱視の加療にも力を尽くされている佐久間先生に、「子供の視力を守るポイント」についてお話を伺いました。
佐久間先生が眼科の先生になったきっかけを教えてください。
眼科医を志したきっかけは「自分も目が悪かった」ということです。
10歳くらいからメガネをかけていました。
ただ、元々は内科系に進もうと思っていたんですよ。研修医は色々な科を回らなければならないため、外科系を選ぶ際には「自分の目が悪い」ということから、眼科を選択しました。
眼科では多くの白内障患者を診察しましたが、白内障の手術って目の中を顕微鏡で覗きながら執刀します。目の奥ってとても綺麗で美しい世界が広がっているんですよ。
一方、内科というのは薬を服用するおかげで治っているのか、それとも患者本来の治癒力で自然に治ったのか、はっきりと判別できない点がありますよね。そのせいか、自分で治したという達成感をあまり感じられませんでした。
眼科で白内障の手術をすると、次の日から患者の目が治るため、「わー!見えるようになりました」とダイレクトに喜んでいただけます。自分が手がけた手術の効果で患者の目が明らかによくなることが、眼科医を目指した理由の一つです。
ただ、目の病気も色々な種類がありますから、全て治るとは限りません。時には眼科医として壁に突き当たることもありますが、少しでも地域の医療に貢献できるように日頃から心を込めて診療にあたっています。
ものを見る能力は生まれた時からあるわけではない
子供は何歳くらいから視力が完成していくものなのでしょうか?
ものを見る能力は赤ちゃんの時から備わっているわけではありません。
生まれた時はぼやっとしか見えていなくて、徐々に「見る能力」を獲得していきます。
通常は6歳ぐらいに1.0が見えるようになります。したがって、小学校に入学する時点で大体の視力が完成されているといえます。
近視が始まる年齢を教えてください
小学校に入学して勉強するようになると、だんだん近視の人が増えていきます。
そのため、小学校に入学する年齢から近視が始まるというのが一般的なストーリーです。
しかし、現在は近視の低年齢化が問題になっており、就学前の3歳〜5歳の時点で近視になる子供が存在します。
背景を聞くと、「小さい時からタブレットを自由に使っている」「お受験で勉強している」などの理由が挙げられます。6歳未満で近くのものを見る時間が極端に長いと近視になりやすいため、最近の小学生は30%が近視、高校生になると70%が近視になっています。
コロナ渦で家の中に閉じこもりやすくなり、スマホを使う時間が増えたことにより、近視がものすごく増えているのが注意したい点です。
近視の原因は遺伝ではなく生活習慣の積み重ね
近視になってしまう原因について、分かりやすく教えてください。
近視は生活習慣の積み重ねで発症するので、ゲームやタブレットにハマると危険です。
そのため、6歳未満には外で走り回るなど屋外で遊んでもらうのをおすすめします。それをやらないでタブレットを触っていたり、ゲームにハマっていたりすると近視になる可能性が高まります。
私は地域の小学校の校医を担当しているのですが、春の定期検診をする際に近視の低年齢化を実感します。
近視になると生活する上で困ることはありますか?
例えばサッカーをやる時に目が悪かったら、運動能力が落ちてしまいますよね。
授業を受けるときに黒板が見づらいと勉強もわかりにくくなります。
そのため、運動や勉強に支障が出ることが考えられます。
近視は病気ではないが、目の病気を発症しやすくなる
近視になると身体的に良くない影響を与えるのでしょうか?
大前提として、近視は病気ではありません。
近視はメガネをかければものが見えやすくなりますよね。なので、子供の近視も「病気ではない」という扱いで、今まで眼科の先生もあまり力を入れていませんでした。
例えば、白内障や緑内障はメガネをかけても見えないため、「病気」として扱われます。
問題は、近視になると、大人になってから緑内障や網膜剥離など目の病気を発症しやすくなることです。目の奥が病気になる可能性が高まるため、将来的に緑内障など目の病気にかかるリスクを抱え、最悪の場合、失明してしまう可能性があります。
近視になることで先生が懸念されていることはありますか?
近視の人が増えるということは、目の病気にかかる人も多くなる可能性があるということです。したがって、網膜剥離などは今から40年後はさらに増えるのではないかと懸念されています。近視になると目の病気を発症するリスクが高まるため、近視を何とか抑えようという動きが眼科医の中でも広がっています。
近視を防ぐ3つのポイント【姿勢・外遊び・デジタルデバイス】
親が子供の近視を防ぐために注意したいポイントを教えてください
極論としては、近くを見なければ良いわけです。
できるだけ子供が「遠くを見る」環境を設定するように、保護者の方は心がけましょう。
目と本の距離は必ず30センチは空けるのがポイントです。4〜5歳から徹底すると良いですよ。寝っ転がって本を読むのは良くありません。
子供の近視を防ぐ効果的な対策を教えてください
私が近視の相談で来院する親子に、「近視にならない為の3つの約束」をお伝えしています。まず、1つ目の約束は、「姿勢よく字を書く・本を読む」ということです。字を書いたり本を読んだりするときは、対象物との間隔を30cm開けるように指導しています。2つ目の約束は、「外でしっかり運動する」という点です。太陽光を浴びる行動を毎日2時間行うことをおすすめします。ただ、現代では塾や習い事に通う子供が多いため、放課後の外遊びは難しいかもしれませんね。
3つ目の約束は、「ゲーム機・PC・タブレットを中学生までは極力使用しない」ということです。12歳を大人と子供の一区切りとして位置付けています。ゲーム機やタブレットなどのアイテムで動画を近い距離で見ると、目の筋力を酷使してしまいます。そうなると近視になりがちなので、とても影響が大きいです。
「姿勢を良くする」「外で運動する」「スマホなどデジタルデバイスの使用を抑える」のが大きなポイントです。
小学生からスマホが習慣付くと近視になる確率が高くなる
子供の近視を防ぐために親が心配りをしたいことは何でしょうか?
子供の近視を防ぐには、12歳までが一つの区切りと言えます。
そのため、中学生になるまではスマホやパソコン、タブレットになるべく触らない環境を整えるようにしましょう。影響力が強すぎます。親がスマホに依存しすぎない姿勢を見せることが重要です。
家庭内の環境が大切なので、親子で意識づけするようにしてください。低学年からスマホの習慣が付けばつくほど近視になる確率が高まります。
タブレットやスマホのどのような点が目に良くないのでしょうか?
スマホの動画は動くスピードがめちゃくちゃ速いので、目の筋力に大きな負担を与えます。ただ、子供の目の筋肉は柔らかく疲れにくいため、長時間見ることが可能です。そのため、際限なくスマホを触っているという状況が考えられます。あと、夢中になると、つい見る距離が近くなりがちですね。どうしても背中を丸めながら、近くで画面を見てしまい、近視が進んでしまいます。
現代の子供たちが近視になりやすい背景は何でしょうか?
ゲームやスマホの発達が、近視になりやすい要因といえます。
今の世の中はスマホの時代に適した「目」になっているのです。
一昔前は、今のように精巧なゲーム機など開発されていないし、スマホで動画を見ることもありませんでした。
今は電車とかで子供が騒ぐとスマホを見せて誤魔化す親が増えていますし、スマホで子育てするのが当たり前という親が多く見られます。
アイケアークリップを活用して子供の「見る姿勢」を管理
アイケアークリップを実際に使ってみた感想を教えてください
いくら家庭で「見る環境」を整えようとしても、親が24時間「見る姿勢」を管理することはできません。
アイケアークリップは、姿勢を良くすることを手助けするツールとして初めて出会えた、素晴らしい商品です。姿勢が悪くなった瞬間に教えてくれるので、使ってみたいと思いました。アイケアークリップを使用することで子供本人の自覚を促せます。
先ほどお話ししました「3つの約束」の内、①の「姿勢よく字を書く、本を読む」の助けとして効力を発揮する製品だと思われます。現状、使用されている近視薬は抑制する為のものであり、完治はしません。近視は生活習慣病なので日々の行動が重要となります。その中で患者の姿勢をよくすることが、一番医師として難しいことです。
子供の姿勢を親や医師が24時間見て回る事ができないので、アイケアークリップが、親の代わりに子供に対して注意を行い、告知できるアイテムとして、初めて、有益なものに出会えたと感じています。
アイケアークリップの効果的な使い方はありますか?
家庭内で子供が勉強するときにかけさせると有効です。
姿勢が悪いとブルブルと振動して注意を促すシステムなので、子供がすぐに自覚できます。
近視の回復は難しいため、日頃から「見る距離」を管理することが必要
子供の近視を予防したい保護者の方にお届けしたいメッセージはありますか?
実は大人も姿勢が悪い方が意外と少なくありません。
当院のスタッフを見ていても猫背気味の人が多いなと。パソコンとかする時に姿勢が悪くなりやすいんですよね。目も悪くなるし、肩こりもひどくなりますから気をつける必要があります。
アイケアークリップはスマホにデータを蓄積できるので、今日1日でどれだけ姿勢が悪かったかを「見える化」してくれます。なので、大人でも姿勢を良くしたい方は、使ってみても良いと思いますよ。
大人の近視も増えていますか?
最近は40代になっても近視になる人が多いですね。
プログラマーなどパソコンを特に使用する職業の方が多くみられます。
今後の戸塚先生の取り組みについて聞かせてください。
現在、将来的に保険適用が可能である近視薬の開発の支援をしています。
マイオピンなど近視の進行を抑える点眼薬がありますが、保険適用外なので価格が高いんですよ。厚労省が認可したら保険適用が可能になるので、近視を抑える薬がもっと身近なものになります。保険適用されるまでには数年かかるとされていますが、近視薬は保険適用の動きがあります。
佐久間 浩史先生プロフィール
[日本眼科学会専門医]
大学病院などで長く勤務医経験を積み、さまざまな症状を診療、白内障手術も多数手がけたベテランドクター。2006年の開業後は、地域の複数の学校で校医を務めている。地域の方に向けた勉強会なども定期的に開催し、常に地域に密着しながら、心を込めて診療にあたっている。
略 歴
平成 8年 藤沢市民病院 臨床研修医
平成10年 横浜市立大学医学部附属病院 眼科常勤医
平成12年 佐伯眼科医院 医長
平成14年 横浜労災病院 医長
平成15年 横浜南共済病院 医長
平成17年 横浜市立大学医学部附属病院 助手
平成18年 戸塚ヒロ眼科 開設