福岡国際医療福祉大学 潮井川先生にインタビュー!アイケアークリップで視力をコントロール
斜視・弱視の専門家である視能訓練士として、近視の抑制や視覚機能の発達を促す
潮井川先生は、福岡国際医療福祉大学で、生徒たちの病院実習や国家試験対策を主に担当されています。同大学は、福岡市で初めてとなるリハビリテーション職を養成する4年制大学です。九州の4年制大学で唯一の視能訓練士養成学科のある大学で、高い専門性を生かした医療の提供をめざす視能訓練士を養成しています。
「親が子どもの近視を防ぐ方法について」潮井川先生にオンラインでお話をお伺いしました。
視能訓練士とは斜視や弱視の専門家
視能訓練士とはどのような仕事をするのでしょうか?
眼科を受診された患者さんに最初に対応するのは視能訓練士です。主訴や症状から原因疾患の候補を挙げ、検査を通じて視機能の評価を行い、正確な診断のために必要なデータを集めます。斜視や弱視の訓練は特に専門としています。
あとは、視覚障害とまではいかなくても、『モノが見えにくい』など、目に何かしらのトラブルを抱えている人のサポートも行います。
いわゆるロービジョンケアです。大学では視覚機能に関する講義をするほかに、学生の国家試験対策の指導や就職サポートもしています。」
潮井川先生が大学の教員になったきっかけを教えてください。
「大学の教員になる前は専門学校の教員をしていました。そもそも教員になったきっかけは、以前、視能訓練士として臨床現場で5年ほど働いていたことです。
臨床を日々行う中で、分からない点がたくさん出てくることもあり、もっと視覚機能について深く突き詰めていきたいと考えていました。
研究するには教育現場に行くのが一番良いと考え、専門学校の教員をしながら大学院に進んでいます。いわゆる『社会人大学院』というものですね。
専門的な研究スキルを身に付けたくて進学しました。大学院を修了すると大学教員になれるので現在に至っています。」
臨床現場で分からなかったこととは何ですか?
「まさに『近視』の進行メカニズムと治療方法ですね。私自身が子供の時から近視が強く、実は近視に関する民間療法とかも試してみました。だけど、全然効かなかったですね。」
近視は遺伝だけでなく環境にも影響される
近視になってしまう原因について、分かりやすく教えてください。
「近視の原因として今分かっているのは、遺伝要因プラス環境要因が複雑に絡んでいるということです。
近視進行の原因は遺伝か環境のどちらかだけに偏っているわけではないんですね。ちなみに人種的には、東アジア人が多い傾向です。
最近の研究では、これまで充分に検討されていない環境要因に注目が集まっています。まあ、昔から『ゲームばかりしていたら目が悪くなるよ』と言われていたと思いますが、確かに近くでモノを見る機会が多い人の方が、進行しやすいことが分かっています。
しかし、近くでモノを見たからといって必ずしも近視になるということではありません。つまり、遺伝要因として近視に『なりやすい人』と『なりにくい人』が存在し、その要素に環境要因がプラスされることで発症すると考えられています。ゲームだけが悪いわけではないんですよ。」
今、近視を防ぐトレンドは「バイオレットライト」
近年、注目されている近視を防ぐトレンドについて教えてください
「今、注目されているのは『バイオレットライト』という太陽の光に含まれる紫系の光が現在のトレンドとなっています。この『バイオレットライト』については慶應義塾大学のチームが検証を進めています。
今までのイメージでは、紫外線に近いから体に悪いのではないかと思われていました。しかし、同大学はこの紫成分の光が『目の眼軸の成長をストップしてくれる』ということを、動物実験レベルで証明しました。これを利用すれば、近視の進行を抑制できるということを2015年5月に報道機関に発表しました。
このようなことからも、お子さんの場合、外遊びをする子は近視になりにくいというわけですね。
ブルーライトカット眼鏡は子どもの近視の抑制に効果があるのでしょうか?
「最近、パソコンをする時のブルーライトカット眼鏡が眼精疲労を軽減すると言われ人気が出ています。
しかし、大人は 良いのですが子供にとってはそういうわけではないですね。ブルーライトカットの眼鏡を装用すると、同時にバイオレットライトもカットされてしまうんですね。
そのため、子どもにとっては逆に近視を進めるリスクがあるということが、日本眼科学会からも発表されています。
近視であるからといって勉強や運動の能力が低下するということはない
年齢が低いほど視力低下は進みやすいのでしょうか?
「早く近視が発症した人ほど、強度の近視になりやすいという傾向があります。
近視の低年齢化と強度近視の問題ですね。ある程度強い近視があると眼病になりやすくなることが分かっています。
したがって、小学校低学年など早い年齢から近視になってしまうのを防ぐ必要があります。」
眼病リスクもそうですが、そもそも遠くが見えにくいと何かと不便ですよね?
「そうですね。実際に遠くが見えにくいと日常生活のパフォーマンスが低下する恐れがあります。眼鏡やコンタクトもありますが、費用負担もまあまあありますよね。日常生活を送る上では近視でないほうが便利だと思います。」
近視になった場合は、なるべく進行を遅らせるのが良いということですか?
「近視を発症した場合は、強い近視にならないようにコントロールすることが必要になります。
年齢が低い程、すぐに眼科を受診し対応した方が良いと思います。ある程度の段階で近視を抑制できれば、眼病リスクを減らせると考えています。近くを見るのには、軽い近視のほうが便利なんですよ。」
視力が低いと子供の学習能力や運動能力が低下しやすいのでしょうか?
「勉強や運動に関しては、近視だからといって能力が低くなるということはありません。
中程度の近視になると常に眼鏡が必要ですが、軽度であれば黒板の字も確認できますし、逆に軽い近視は、近くを見るのにピントを調節する力が人より少なく済みますので、勉強が捗るかもしれません。」
子供の近視を抑制するには親の関わりが必要
親だからこそできる子どもの目の守り方を教えてください(生活の仕方など)
「小学校低学年などの子供の近視は、早い段階で近視の抑制をした方が良いといえます。眼科で抑制治療をしてコントロールした方が良いですね。
あとは、子供が見る環境を親が整えるようにしましょう。
例えば、アイケアークリップのデバイスを活用するのも良いですし、外で遊ばせるのも効果的です。これらを色々試しつつ、眼科でも相談していけば、かなりの効果が出ると思います。」
アイケアークリップを活用して子供の「見る距離」を管理
アイケアークリップにご興味を示された理由を教えてください。
「アイケアークリップは自分では気づかない、見る距離や姿勢をデバイスが教えてくれるのが良いですね。悪い姿勢や目の距離を振動アラームで注意してくれます。
さらに、アイケアークリップを外した後も効果が持続するという実験報告もでています。ちょっとでも意識することで、距離を保てるようになるんでしょうね。」
アイケアークリップを使ってみた感想はいかがですか?
「最初は重さを感じるかなと思っていたのですが、そうでもありません。
自然に違和感なく使用できる点がいいですね。
アプリで詳しい情報や集計データが確認できるのもメリットです。現時点において見る距離をきちんと管理できるツールとしては、アイケアークリップ以外はないと考えています。」
近視の回復は難しいため、日頃から「見る距離」を管理することが必要
今後の潮井川先生の取り組みについて聞かせてください。
「今後の取組みとしては、近視の原因をはっきりさせ、最終的に視力をコントロールできるようになるのが目標です。近視は一度なると回復させることは今の所できないんですね。
将来的には遠視もコントロールできたら良いなと考えています。」
取材のご協力
福岡国際医療福祉大学
医療学部 視能訓練学科
https://fiuhw.takagigakuen.ac.jp/
潮井川 修一 (certified orthoptist)
2004年視能訓練士免許取得。眼科臨床での勤務を経て2009年から視能訓練士養成校で学生教育に携わる。
2021年より現職。現在、近視に関連する研究のほかスポーツ中や運転中の視線解析、発達障害児の視覚的支援にも関わる。